今回は曲に合わせてギターでアドリブを弾く方法、それに伴いギターソロでのスケールの選び方についてまで解説していきます。
音楽ジャンルの違いや、どういうシチュエーションによってアドリブを弾くのか、ということによっても方法論や思考法には違いがあります。
今回はロック・ポップスに絞り、アドリブ&ギターソロの作り方に解説。
「TAB譜を見てギターソロをコピーするのは卒業」「はじめてのアドリブに挑戦したい」「オリジナル楽曲でギターソロを作りたい」などお考えの方は、ぜひご覧ください。
アドリブとは
そもそもアドリブとは日本語にすると”自由に”、”好きなように”などの意味があり、音楽でいうと楽器演奏者が自由に音を選んで即興で演奏するというプレイになります。
そこでアドリブ初心者が陥る悩みは「何を弾けばいいのかイメージが涌かない」「どのスケールを弾けば音が合うかわからない」などの疑問にぶつかると思います。
アドリブのレベルを3つに分ける
ここで仮にアドリブのレベルを3段階に分けて考えてみましょう。
そして最終的にはLv.3でのアドリブプレイにたどり着ける思考法を解説します。
レベル1ではあらかじめにアドリブで演奏するフレーズ、そしてコード進行がわかっており、フレーズを丸暗記してプレイします。ギターソロのコピーとほぼ同様です。
レベル2では1~2小節の短いフレーズをいくつか暗記し、さらにあらかじめ分かっているコード進行からコードトーン(コード構成音)を意識しながらアドリブソロの盛り上がり方まで考えてプレイします。
レベル3では予行練習は一切せず、様々なコード進行に対してアドリブプレイを即興で演奏します。
レベル1からレベル2への道
まずレベル1からレベル2へ進むために、ただ単にギターソロをコピーするのではなく、後ろで鳴っているコード進行を分析します。
コード進行とギターソロを同時に照らし合わせることで、ダイアトニックコード上で何のスケールが使われているかがしだいにすぐわかるようになってくるはずです。
例えば、C→G→F→Fmというコード進行があった場合、楽曲のキー(key)はCメジャーと予想できます。ですが1番最後のFmコードはCメジャーダイアトニックコードには無い、ノンダイアトニックコードです。
*Cメジャーダイアトニックコード
ⅠM7 | CM7 | T |
Ⅱm7 | Dm7 | SDⓢ |
Ⅲm7 | Em7 | Tⓢ |
ⅣM7 | FM7 | SD |
Ⅴ7 | G7 | D |
Ⅵm7 | Am7 | Tⓢ |
Ⅶm7♭5 | Bm7♭5 | Dⓢ |
*ⓢ・・・代理
*T・・・トニック(安定)
*SD・・・サブドミナント(少し不安定)
*D・・・ドミナント(不安定)
このようなノンダイアトニックコードでの音使い、またはスケール選びが悩みの原因という方も多いと思います。
先ほどのコード進行に出てきたFmコードがどこから登場したかというと、同主調のCmキーから借用されたコードであるサブドミナントマイナーコードになります。
*Cmダイアトニックコード
Ⅰm7 | Cm7 | Tm |
Ⅱm7♭5 | Dm7♭5 | SDmⓢ |
♭ⅢM7 | E♭M7 | Tmⓢ |
Ⅳm7 | Fm7 | SDm |
Ⅴm7 | Gm7 | Dm |
♭ⅥM7 | A♭M7 | SDmⓢ |
♭Ⅶ7 | B♭7 | SDmⓢ |
*ⓢ・・・代理
*Tm・・・トニックマイナー(暗く安定)
*SDm・・・サブドミナントマイナー(暗く少し不安定)
*Dm・・・ドミナントマイナー(暗く不安定)
つまりC→G→F→Fmというコード進行で使用するスケール例では、C→G→Fというコード進行ではCメジャースケール、Fmコード上ではCmスケールを使用するという選択が可能です。
このようなコード進行の分析やスケールの選び方をするためにも、音楽理論の知識があるかないかで、ステップアップにかなりの時間の差が生まれてきます。
さらに様々な楽曲を聴くことによって、ギターソロやアドリブの盛り上がり方だけではなく、チョーキングやスライド、ビブラートのニュアンスを意識することも大切です。
レベル2からレベル3への道
様々な楽曲のギターソロや教則本などに載っているギターエクササイズをコピーしていくうちに、次第にギターフレーズのストックも貯まってくるでしょう。
そしてレベル2の段階では、さらにアドリブをする小節数、リズム、コード進行からアドリブの盛り上がり方まで考えソロを弾きます。
このレベル2からレベル3にステップアップするためには、理論的な知識はもちろん、様々なパターンでのアドリブプレイのストックが大量にあることが前提であり、コード進行やテンポを把握してから一瞬でフレーズを思いつかなければなりません。
どれだけ自由にアドリブをするプレイヤーも意識的・無意識的にせよ、フレーズを弾く前に“メロディのイメージ”があります。このイメージをどれだけ速く思いつき、演奏中も絶やさずイメージし続けることがカギです。
アドリブ実践練習法
ここまで仮にアドリブレベルを3段階に分けて考えてきました。
アドリブ初心者の方は、レベル1からレベル2にステップアップする段階で悩んでしまう方が多いかと思われます。
そして続いて、アドリブレベル1からレベル2へステップアップするための実践的な練習法をご紹介します。
ブルースでアドリブに慣れる

まずはお決まりの練習法で、Aブルースです。
Aブルースとは、A7コードから始まる12小節のコード進行です。Youtubeや教則本にあるアドリブ用音源を使いながら取り組みます。DTMで作成しても良いでしょう。
|A7 |D7 |A7 | |
|D7 | |A7 | |
|E7 |D7 |A7 |E7 |
このAブルース進行で、まずはAマイナー・ペンタトニック・スケール(Cメジャー・ペンタトニック)を使用して練習します。
A7に対してAマイナーペンタトニックなので、ブルースというジャンルに合った暗く悲しい響きとなります。
そして次のステップとして、AマイナーペンタトニックにAメジャーペンタトニックを加えアドリブをしてみましょう。
A7上でメジャーとマイナーを同時に使用することで、明るい響きと暗い響きを使いこなし演奏の幅を広げることが目的です。
ブルースの名曲「クロスロード」を演奏するエリック・クラプトンは、ギターソロ中に使用していたスケールもマイナーペンタトニックとメジャーペンタトニックです。
もちろん、メジャーペンタトニックとマイナーペンタトニックを2つ同時に使用したほうが良いということではありません。ですがこのようなスケール選択法があるという知識を持っておくことで、表現の幅の自由度は変わってきます。
ブルースを演奏する著名なギタリストは多数いますので、動画や音源で演奏パターンの研究することもともて大切な練習の1つです。
ポップスにありそうなコード進行を使用してアドリブ
続いてはポピュラーミュージックで多用されるコード進行を使用してアドリブをしてみましょう。
もちろんギターソロに合わせてオリジナルのソロをアドリブで弾くのも効率的な練習です。
アドリブ用音源だけではなく、既存のJ-POPや洋楽を流しながら取り組むのも良いでしょう。
ここでは様々な演奏パターンを習得していくため、ダイアトニックコードには無いノンダイアトニックコードがコード進行に入ったパターンも練習してみましょう。
例として先ほどもご紹介しましたが、C→G→F→Fmというコード進行では、C→G→FではCメジャースケール、Fm上ではCmスケールを使用するというような選択法が可能です。
考え方の例としましては、Gメジャーの楽曲で間奏でのコード進行がAm→Emという進行が続いた場合、どちらのコードもCメジャーダイアトニックにありますが、楽曲全体から考えた場合Gメジャースケールを使ってアドリブをとるほうが演奏例としては多いです。
例えばですがハードロックやメタルなどのジャンルでは、ダークさを演出するためEm上でEフリジアンスケールを基調としてソロを構築するといった手法もとられます。
とくにジャズ寄りな考えの方の場合は、コードごとにモード・スケールを展開していくという方も多くいます。
ルーパーを使って様々なテンポ、コード進行に対してアドリブ
■TC ELECTRONIC(ティーシーエレクトロニック)/Flashback 2 Delay ディレイ・ペダル
続いて、練習の総仕上げとしましてルーパーを使ってアドリブをします。
もちろんルーパー機能がメインのエフェクターを購入しても良いのですが、t.c.electronic社が発売する『Flashback Delay』では、高性能なディレイエフェクターだけではなく、ルーパー機能も付随しています。
ルーパー機能を使用して、様々なコード進行をループさせ練習します。
1つの例として、Em→B7という進行をループさせ、Em上でEナチュラルマイナー、B7上でEハーモニックマイナーへスケール、この2つのスケールを上手く移動させながら弾いてみましょう。
次第にループさせるコード進行の小節数を増やしながら取り組んでみてください。
もう1つ、カノンコード進行を元にコード進行を考えてループさせてみましょう。
|C |G |Am|Em|
|F |C |B♭|G |
このコード進行では、キーがCメジャーのカノンコード進行が元になったコード進行です。
本来のカノンコード進行では、Ⅰ→Ⅴ→Ⅵm→Ⅲm→Ⅳ→Ⅰ→Ⅳ→Ⅴという進行ですが、最後から2番のコードはB♭となり♭Ⅶです。
このB♭コードは、同主調のCmキーから借用されたコードです。そのため、B♭上ではCmスケールからB♭のコードトーンを意識しながら、さらにはアドリブの流れが細切れにならないように演奏することが大切です。
おわりに
今回はアドリブ演奏について解説しましたが、様々な方法論がありまだまだ深い演奏法です。
アドリブを自分のモノにするには、知識と運動をリンクさせるため習得には長い期間がかかると思います。
あえて1つアドバイスするとしたら、音楽理論の知識を先行して習得することをおすすめします。
なんとなくアドリブをするのでは演奏の幅がどこかで頭打ちになる恐れがありますので、知識ありきでアドリブの練習をするほうが良いでしょう。