今回は、アコースティックギター”アルペジオ奏法“について解説。
シンガーソングライター志望の方や、アコギ弾き語りをしている方では、イントロや間奏(もちろん曲中にも)で使えるようなテクニックの習得のお役に立つはずです。TAB譜と楽譜を併用しながら実践的なエクササイズを行っていきましょう。
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アルペジオとは
まずアルペジオ奏法とは、コード(和音)を鳴らす時に、コードトーン(構成音)を同時に鳴らすのではなく、バラバラに鳴らすことをアルペジオ奏法といいます(分散和音)。
例えばギターでアルペジオを弾こうと思ったら、まずはコードを押さえてルート音の低い音から順番に1弦に向かっていくという奏法や、高い音の1弦側から6弦側に上がってくるような、様々な奏法があるのです。
その他にも、ハンマリングやプリングといった奏法を組み入れながらアルペジオを弾くという手段もあります。一概に「基本のアルペジオパターン」といったものはありません。
エレキギターでのアルペジオ奏法をする時は、ピックを使って演奏する、またはピック&指を使って演奏する方が多数だと思います。
もちろんアコースティックギターの場合でも同じなのですが、ここではぜひピックを使わずに指だけで、指弾き(フィンガーピッキング)アルペジオ奏法にチャレンジしてください。
指弾きができると、ソロギターが演奏したい方だけではなくアコギで弾き語りをしている方や、シンガーソングライターの方にも、伴奏中はもちろんイントロや間奏で今までと違ったアプローチの仕方ができるようになります。また、表現幅の選択肢が格段に増えるはずです。
それでは、実践的なエクササイズのほうにいってみましょう。
アルペジオ/ギターエクササイズ1
*目標テンポ80
まずこちらの譜面を見てください。キーがCメジャーのコード進行です。Cメジャーダイアトニックコードの、Ⅰ-Ⅴ-Ⅵm7-ⅣM7の進行、つまり1-5-6-4の進行で感動コード進行で作成してみました。
ⅠM7 | CM7 | T |
Ⅱm7 | Dm7 | SDⓢ |
Ⅲm7 | Em7 | Tⓢ |
ⅣM7 | FM7 | SD |
Ⅴ7 | G7 | D |
Ⅵm7 | Am7 | Tⓢ |
Ⅶm7♭5 | Bm7♭5 | Dⓢ |
*ⓢ・・・代理
*T・・・トニック(安定)
*SD・・・サブドミナント(少し不安定)
*D・・・ドミナント(不安定)
こちらの譜面の演奏のポイントとしまして、アルペジオの始まりの音は全てルート音となっています。ここで気をつけてもらいたいのが、ルート音を弾いている最初の音符は全音符です。しっかりと、小節いっぱい音が伸びるように気をつけましょう。
ちなみに、8分音符のコードトーンも音が伸びていてかまいません。そうすることで、アルペジオでの音量が増します。
しかし状況によっては、しっかりと音符通りに音が重ならないよう弾いたほうが好ましい時もあるのです。
またエクササイズ・フレーズを演奏する時は、ギタータブ譜だけではなく楽譜も見るようにし、音の長さも確認しましょう。
こちらのエクササイズでは、1小節の内前半が8分音符で、後半が2分音符となっています。右手の指使いに関しては、6弦から4弦までの低音弦を親指で弾くようにし、3弦から1弦の高音弦を人差し指、中指、薬指を使って捉えるように意識してください。
この指使いも厳密には決められていませんので、お好きに変えてもらってかまいません。ちなみにクラシックギタリストは、右手の指自体が弦の当たるというよりは、指の爪だけを使い演奏します。
次に注目してもらいたいのがFM7の小節です。このFM7コードを押さえる時のコードフォームは、左手を握り込むようにして親指で6弦1フレットのファを押さえてください。
それに続き薬指で4弦3フレット、中指で3弦2フレット、人差し指で2弦1フレットを押さえます。
この時に2弦1フレットを押さえた人差し指が、1弦に触れてしまわないように気をつけましょう。
ギター初心者の方は、テンポを十分遅くし、指の確認とともに始めてみてください。まずは確実に正確に、テンポ60で弾けることを目指しましょう。
譜面によって音を伸ばすのが好ましくない場合はしっかりと特定の音をミュート
TAB譜だけではなく、楽譜も併用する
・右手
6~4弦を鳴らす時は親指
3~1弦は、人差し指、中指、薬指
・左手
他の弦に触れないように、フレットを確実に押さえる
逆に鳴らしたくない弦は触れてミュートする
握り込み型のFコードフォームも習得する
アルペジオ/ギターエクササイズ2
*目標テンポ80
続いてはエクササイズ1を少し発展させたアルペジオフレーズです。後半の2小節もともに8分音符のフレーズとなっています。3拍目の裏から、右手の中指と人差し指の交互となりますが、リズムがブレないように注意しましょう。
とくに指使いは変わりありませんが、小節が終わるギリギリまで8分音符があるので、素早くコードチェンジができない方もおられるかと思います。そんな方は、まず初めに鳴る音から押さえにいってください。
例えばCコードの小節で、最後の8分音符の2弦1フレットのドを弾いたら、まずは左手の薬指を意識し6弦3フレットを押さえ、右手の親指で鳴らします。
次に4弦、3弦、2弦の開放弦を鳴らしていきながら、1弦の3フレットを鳴らすタイミングで左手の小指で押さえればなんの問題もありません。
それに加え、6弦3フレットのソが鳴っている2小節目の頭で、まだ2弦1フレットのドが鳴っていないように気をつけてください。
このエクササイズトレーニングでは、ルート音やコードトーンは音が伸びていることが好ましいです。次のコードチェンジまで、ルートが鳴っていることを確認しながら行ってください。
アルペジオ奏法をする中で、適切な弦を鳴らしながらコードチェンジができれば問題ない
アルペジオ/ギターエクササイズ3
*目標テンポ80
続いてのエクササイズフレーズは、小節の1拍目の頭のフレーズが複音となっているパターンです。こちらのフレーズは1拍目で音を同時に3つ鳴らし、右手の指使いは、親指でルート音の低音弦、人差し指と中指を使って3弦と2弦と捉えます。そして右手で同時に弦をつま弾き。
意図してタイムラグを生み出したい場合は、同時につま弾くのではなく、親指、人差し指、中指の順番に、少しズラすように鳴らしましょう。
3拍目の音は2分音符なので、しっかりと拍数分だけ音を伸ばすように気をつけてください。続いては、アルペジオ奏法の課題エクササイズに挑戦してみましょう。
アルペジオ課題曲「マッスルペジオ」
*目標テンポ80
それでは、ギターアルペジオ課題曲「マッスルペジオ」に挑戦してみましょう。コード進行は、世界中で愛される進行【カノンコード】です。とくに難しいポイントはありませんが、1~3小節目までは、2拍目8分音符裏から3拍目8分音符表まで音が伸びています。次の音符を3拍目8分音符裏で上手く捉えることが大切です。
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おわりに
今回のアルペジオ奏法のエクササイズをご紹介しました。まずはゆっくりと指使いを確認しながら取り組んでみてください。徐々に指で弾く運動神経、つまりアコギ脳が鍛えられていきます。
指だけを使ってギターを鳴らす指弾きは難しいイメージがあるかと思いますが、しっかりと指弾きのトレーニングを積んでいけば誰でもできるようになることは間違いありません。
ソロギターを弾きたい方だけではなく、シンガーソングライターの方・アコギで弾き語りをしている方にも、表現の選択肢の幅が広がるでしょう。