ヒット曲の秘密【カノンコード進行】

ギターを弾く天使

今までもコード進行については解説してきましたが、今回はヒット曲、それも「カノンコード進行」と呼ばれるコード進行について考察していきましょう。

ヒット曲が生まれる理由としましては、メディアの力や、映画やドラマの主題歌としての起用などの理由もありますが、1つの共通点としまして「コード進行」があります。

人々が劇的に感じるコード進行として、「感動コード」と呼ばれるコード進行があります。その感動コード進行の元となっているといってもいいコード進行が「カノンコード進行」です。

我々人間は生まれてきてから様々なヒット曲に耳を傾けながら育ち、大量のヒット曲のデータベースがあります。そんな我々の記憶を刺激し、脳内ホルモンを分泌させるコード進行が「カノンコード」です。

世界中にはこの「カノンコード進行」を使ったヒット曲が大多数あり、今回は「カノンコード進行」のヒットJ-POPを取り上げ解説していこうと思います。まずは、「カノンコード進行」のコード進行から見ていきましょう。

カノンコード進行とは

感動コードと呼ばれるコード進行は、キーがCメジャー(ハ長調)だとこのような進行になります。

|C |G |Am |F |
ⅠM7 CM7 T
Ⅱm7 Dm7 SDⓢ
Ⅲm7 Em7 Tⓢ
ⅣM7 FM7 SD
Ⅴ7 G7 D
Ⅵm7 Am7 Tⓢ
Ⅶm7♭5 Bm7♭5 Dⓢ

*ⓢ・・・代理
*T・・・トニック(安定)
*SD・・・サブドミナント(少し不安定)
*D・・・ドミナント(不安定)

<1-5-6-4>進行などとも呼ばれ、ダイアトニックコードの1番目、5番目、6番目、4番目のコードのつながりです。

また、この感動コード進行の始まりのコードを変えたコード進行もよく使用されます。

例:|Am |F |C |G |

ではカノンコード進行とはどういう進行かといいますと、このようになります。

|C |G |Am |Em |F |C |F |G |

ダイアトニックコードの番号で見ると

<1-5-6-3-4-1-4-5>

というふうになり、最後がドミナントコード(不安を感じさせる)なので、トニック(安定)に戻りカノンコード進行を繰り返すというパターンもあります。

カノンコードのヒット曲

このカノンコードの名付け親となる曲が、誰もが一度は聴いたことのある『パッヘルベルのカノン』です。

このカノンコードを元とし、変化させ使用しているヒット曲も多数あるので、変化させているポイントも含めてコード進行を見ていきましょう。

「さくら」森山直太朗

こちらは森山直太朗さんによる「さくら」です。
学生のころ卒業式で歌われた世代の方もいるかと思います。

注目してもらいたいコード進行は、サビ終盤部分の「さらば 友よいま 旅立ちのとき~」からのコード進行です。

|A♭ E♭|Fm Cm|D♭ A♭/C|B♭m7 E♭|
|1    5   |6    3   |4    1/3   |2         5   |
「さくら」のキーは、A♭メジャーになります。
カノンコードでは<1-5-6-3-4-1-4-5>となりますが、「さくら」では最後の2つのコードがツーファイブ進行となっています。
ツーファイブ進行とは、ダイアトニックコードの2番目のコードから5番目のコードへ進行するパターンです。
カノンコード進行で本来使われるのは4番目のコードですが、4番目のコードも2番目のコードもコードの機能はサブドミナントとなり、少し不安定な響きとなります。
カノンコードを元に、最後の2つのコード進行をツーファイブと変化させるパターンは多々あるので覚えておきましょう。

「Love is…」加藤ミリヤ

続いてJ-POP界の歌姫、加藤ミリヤさんで「Love is…」です。
こちらの「Love is…」では出だしからカノンコード進行の繰り返しの進行がメインとなっています。

楽曲のキーはDメジャーです。

|D  A |Bm F#m|G  D/F#|G  A |
|1  5  |6    3     |4  1/3  |4  5  |

「手紙~拝啓十五の君へ~」アンジェラ・アキ

サブドミナントマイナーの名曲編でも取り上げた、アンジェラ・アキさんで「手紙~拝啓十五の君へ~」です。

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アンジェラ・アキさんの「手紙~拝啓十五の君へ~」では、カノンコード進行にサブドミナントマイナーが組み込まれています。

楽曲のキーはA♭メジャーです。
サビの出だし部分からの進行を見てみましょう。

|A♭   |E♭   |Fm   |Cm  |
|D♭  |A♭   |G♭  |E♭   |

|1     |5      |6      |3     |
|4     |1      |♭7   |5     |

最後から2つ目のコードがG♭となり、♭Ⅶのサブドミナントマイナーを組み入れた進行です。
このサブドミナントマイナーの響きが、迷いや悩みと葛藤している様を上手く表現しています。
実は、赤い鳥の名曲「翼をください」のサビ部分でも同じ個所でサブドミナントマイナーが取り組まれています。

「エンドレス・レイン」Xジャパン

続いては、Xジャパンで「エンドレスレイン」です。

サビ部分のコード進行を見てみましょう。
楽曲のキーはBメジャーです。

|B  F#/A#|G#m G#m/F#|
|E  B/D#|C#m7  F#sus4 F#|

|1    5  |6   6/5 |
|4   1/3|2   5sus4 5|

「エンドレスレイン」のサビのコード進行はカノンコード進行とは少し違うような気もしますが、カノン進行がしっかりと根底にある1曲です。
カノンコード進行では4つ目のコードは3番目のⅢmとなりますが、エンドレスレインでは6番目のコードをキープし、4番目のⅣに進行。
次に最後から2番目のコードがⅡmとなり、ツーファイブ進行に変化しています。

「少年時代」井上陽水

続いては井上陽水さんで「少年時代」です。

Aメロ出だしのコード進行を見てみましょう。
楽曲のキーはAメジャーです。

|A  E |C#7  F#m|D  A/C#|Bm  E |
|1  5 |3      6     |4   1/3  |2    5   |
「少年時代」では、3つ目のコードのC#7の箇所がカノンコードからの大きな変化です。
次のF#mに行くためのドミナントコードとして、平行調のF#mキーのハーモニックマイナーからの借用コードです。
Aメジャーキーから考えたら、C#7はⅢ7。
このⅢ7コードも我々人間は哀愁を感じるコードとして、とても機能します。

カノンコードが元となる、その他のヒット曲

カノンコードの【変化型】コード進行
今回はヒットソングによく使用されるコード進行「カノンコード」を、変化させた進行パターンを解説していきます。 コード進行は全てCメジャー・キーで掲載。 ■Cメジャー・ダイアトニック・コード ⅠM7 CM7 T Ⅱm7 Dm7 SD...

・「翼をください」赤い鳥
・「守ってあげたい」松任谷由実
・「負けないで」ZARD
・「愛は勝つ」KAN
・「今すぐKiss Me」LINDBERD
・「愛を込めて花束を」Superfly
・「明日への扉」I WISH

などなどの多数のヒット曲があり、今でも多数の楽曲にカノンコードが元のコード進行が使用されています。

おわりに

カノンコード進行に、少しスパイスを加えたヒット曲は数えきれないほどあります。ヒットした理由は時代・アーティスト・使用された場面など様々な要因もありますが、カノンコード進行も少なからず要因の1つではあり、誰もが耳に残りやすい1曲となった理由の1つです。