今回はドラマ『アンナチュラル』主題歌、米津玄師さんの大人気曲「Lemon」をギター初心者の方でも簡単に弾けるように解説していきます。「Lemon」が高くて歌えないという方用にも、簡単コード一覧は2種類用意しました。
「文化祭やライブで演奏したい!」「あの子にいいとこ見せたい!」
そんな悩みはギタリストマッスルが解決します。
いくつか難しいコードが出てきますが、このGMバージョンのコードなら弾けること間違いなしです。それでは、簡単に弾くための対処法を見ていきましょう。
ギター半音下げチューニング
原曲のキーはBメジャーです。平行調で見たらG#mキーです。
簡単に弾き語りや、歌の伴奏をするために、#や♭がなるべく付かず、なおかつ簡単にポジションを押さえられるコードがいいですよね。
まずはギターのチューニングを半音づつ下げましょう。
レギュラーチューニングでは、6弦からE、A、D、G、B、E(ミ、ラ、レ、ソ、シ、ミ)となってます。
これを半音づつ下げると、6弦からD#、G#、C#、F#、A#、D#(レ#、ソ#、ド#、ファ#、ラ#、レ#)となります。
ギターのチューニング自体が半音下がることによって、帳尻をとるためプレイするコードを半音上げなければいけません。
わかりやすいように初めの2小節を比べてみましょう。
|G#m F#|E B |
・半音下げチューニング
|Am G |F C |
チューニングを半音下げることによって、プレイするキーが半音上がってキーがAm(Cメジャー)になりました。
*Amダイアトニックコード
Ⅰm7 | Am7 | Tm |
Ⅱm7♭5 | Bm7♭5 | SDmⓢ |
♭ⅢM7 | CM7 | Tmⓢ |
Ⅳm7 | Dm7 | SDm |
Ⅴm7 | Em7 | Dm |
♭ⅥM7 | FM7 | SDmⓢ |
♭Ⅶ7 | G7 | SDmⓢ |
*ⓢ・・・代理
*Tm・・・トニックマイナー(暗く安定)
*SDm・・・サブドミナントマイナー(暗く少し不安定)
*Dm・・・ドミナントマイナー(暗く不安定)
dimの代理コード
続いてはAメロのコード進行。
・Aメロ
|Am G |F C |F C |D#dim E |
早速出てきましたのが、D#dimコードです。
ギター初心の方はちょっとこれ見ただけで弾く気を失せる方もいるかもしれません。
ギタリストマッスル読者ですと、このD#dimコードは次のEコードにドミナントが機能しているのはわかるでしょう。
もし音楽理論がさっぱりという方は、半音下の悲しく暗いdim(ディミニッシュ)コードでEコードに近づいていると思ってください。
ちなみに次のEコードもAmコードに行くための、Aハーモニックマイナーから借用されたⅤ7のドミナントコードです。
「D#dimなんてすぐ押さえられない」という方もいるかと思います。
でも大丈夫です!なるべくD#dimの雰囲気を壊さずに代用できるコードがあります。
このD#dimは次のEコードにいくためのドミナントコードです。
さらに、このEコードも次のAmコードに行くためのドミナントコード。
上記の表の通り、AmダイアトニックコードにはD#dimコードなんてでてきません。
それに加えEコードもAハーモニックマイナーからきたドミナントコード。
つまりAmキーでのEを主音とする本来のコードは、AmダイアトニックコードではEm7コードです。
ということは、このD#dimコードはEmコードにドミナント機能を働かせ進行しようとしていたと解釈できます。
ここでEハーモニックマイナーをチェックしてみましょう。
*Eハーモニックマイナー
Ⅰm7 | Em7 | Tm |
Ⅱm7♭5 | F#m7♭5 | SDmⓢ |
♭ⅢM7#5 | GM7 | Tmⓢ |
Ⅳm7 | Am7 | SDm |
Ⅴ7 | B7 | D |
♭ⅥM7 | CM7 | SDmⓢ |
Ⅶdim | D#dim | Dⓢ |
*ⓢ・・・代理
*Tm・・・トニックマイナー(暗く安定)
*SDm・・・サブドミナントマイナー(暗く少し不安定)
*Dm・・・ドミナントマイナー(暗く不安定)
こちらのEハーモニックマイナーの中でドミナント機能を持つのは5番目(Ⅴ7)のコードと、代理で7番目(Ⅶ7)のコードです。
7番目のD#m7♭5は押さえるにはちょっと1フレットから離れているので省きます。
それでは5番目のコードのB7がD#dimの代理に相応しいか、コードトーンを比べてみましょう。
D#dim | レ# ファ# ラ ド |
B7 | シ レ# ファ# ラ |
比べてみたところ、違いはドとシだけです。
むしろ米津さんは暗く悲しくアプローチするために、B7のルート音を取っ払ってB/D#からD#dimに変化させたのかもしれません。
これならD#dimの代理コードはB7に決定です。
B7の押さえ方としては、中指で5弦2フレットのシを、人差し指で4弦1フレットのレ#、薬指で3弦2フレットのラ、2弦は開放弦でシ、小指で1弦2フレットのファ#を押さえてください。
ちなみに指でべたっと押さえるセーハコードが苦手な方のために、Fコードは親指で6弦1フレットを握るフォームをここではおすすします。
m7♭5の代理コード
Bメロではとくに変わったコードは出てきませんので、サビにいってみましょう。
|F C |Bm7♭5-E-Am |
レモンの匂い~っと歌っているところでBm7♭5が出てきました。
Bm7♭5の押さえ方は、人指し指で5弦の2フレットのシ、薬指で4弦3フレットのファ、中指で3弦2フレットのファ、小指で2弦3フレットのレを押さえます。
こちらのコードフォームはできれば覚えておいてほしいのですが「押さえ慣れてないよ」という方もいらっしゃると思いますので、Bm7♭5も代理コードに置き換えてしまいます。
その前にコード進行をもう一度見てみましょう。
|Bm7♭5-E-Am |
Amキーから見たら、Bm7♭5がⅡm7♭5、EがⅤ7、AmがⅠのトニックです。
気づかれた方もおられるかもしれませんが、このコード進行はⅡ-Ⅴ-Ⅰ(ツーファイブ)というドミナントモーションをしています。
Bm7♭5はAmダイアトニックコードで、Ⅱm7♭5であり、機能はSDmです。
SDmは少し不安な暗い響きになります。その他のSDmも見てみましょう。
*Amダイアトニックコード
Ⅰm7 | Am7 | Tm |
Ⅱm7♭5 | Bm7♭5 | SDmⓢ |
♭ⅢM7 | CM7 | Tmⓢ |
Ⅳm7 | Dm7 | SDm |
Ⅴm7 | Em7 | Dm |
♭ⅥM7 | FM7 | SDmⓢ |
♭Ⅶ7 | G7 | SDmⓢ |
*ⓢ・・・代理
*Tm・・・トニックマイナー(暗く安定)
*SDm・・・サブドミナントマイナー(暗く不安定)
*Dm・・・ドミナントマイナー(暗く不安定)
コードの機能がSDmにあたるのは、3つあります。
ここでは次に行くコードがE7ということで、ルートが半音違いのFM7のコードトーンをBm♭5と比べてみましょう。
Bm7♭5 | シ レ ファ ラ |
FM7 | ファ ラ ド ミ |
Bm♭5のコードトーンの中では、レとシ以外の音は合ってます。
ルートも半音違いで滑らかにEに行けるし、Bm7♭5の代理はFコードでも可能です。
続いて、Fとコードトーンが似ているDm7もチェックしてみましょう。
Bm7♭5 | シ レ ファ ラ |
Dm7 | レ ファ ラ ド |
Bm7♭5とDm7とでは3つもコードトーンが一致しました。
Dm7ではなくDmにすれば、7thのドの音がなくなるので、シだけの違いになります。
ここで代理候補のコードが2つ上がりました。DmとFです。
どっちをとるかは人それぞれの好みなんで、次のコードのEのルート音の半音違いのFをとっても、コードトーンがそっくりのDmをとっても、どちらでもOK。
ここではコードトーンの一致率をとって、Bm7♭5の代理コードはDmにしましょう。
次にF#m7♭5というコードが出てきました。
こちらはAメロディックマイナーからきたⅥm7♭5で、機能はTm代理です。つまりAmの変わりをしています。
F#m7♭5の押さえ方は、親指で6弦2フレットのファ#、5弦のラは鳴っても鳴らなくてもOK、4弦は中指で2フレットのミ、薬指で3弦2フレットのラ、人差し指で2弦1フレットのド、1弦のミは鳴ってもならなくてもOKです。
このコードフォームでは5弦と1弦の開放音は他の弦でカバーできているので、鳴っても鳴らなくてもOK。ちなみにこのF#m7♭5のコードフォームはAmと似ています。
押さえ方のコツとしては、ローポジションのAmのコードを押さえながら左手親指で6弦2フレットを押さえるだけです。
でも「覚えるコードを1つでも減らしたい」という声も聞こえてきそうなので、F#m7♭5も代理コードに置き換えてみましょう。
機能はTm代理なので、押さえ方も似ているTmのAmとコードトーンを比べてみます。
F#m7♭5 | ファ# ラ ド ミ |
Am | ラ ド ミ |
4和音から成るF#m7♭5のコードトーンの内、3和音のAmのコードトーンが全て当てはまりました。F#m7♭5の代理コードはAmに置き換えます。
この曲ではラストサビ前にある、Bridge部分で1度転調します。曲のキーが、途中違うキーに変わるのです。
キーが変わった転調先は、Amの同主調のAメジャーキーになります。F#mキーと解釈してもOK。
セーハフォームでF#mを押さえたくない方は、コードをF#m7に変えることをおすすめします。
まず中指で6弦2フレットのファ#を、5弦は押さえず自ずと指に当たるのでミュート、薬指で4弦の2フレットから1弦2フレットまでべたっと押さえましょう。
こちらも1弦の音が鳴らなくてもOKです。
F#m7♭5の代理コードはAm
それでは曲を通してのコード進行を見てみましょう。
半音下げチューニング/Play Key=Am
*ギター半音下げチューニングで原曲キー
*コード簡略化ver.
・イントロ
|Am G |F C |F C |B7 E |
|Am G |F C |F C |G C |
|N.C |
・Aメロ
|Am G |F C |F C |B7 E |
|Am G |F C |F C |E Am |
・Bメロ
|Dm Am |G C |Dm Am |F-G-C |
・サビ
|F C |G Am |F C |G E |
|F C |Dm-E-Am |Dm Am |F-G-Am |
|Dm Am |F-G-C |
・間奏
|Am G |F C |F C |B7 E |
・Aメロ2
|Am G |F C |F C |B7 E |
|Am G |F C |F C |E Am |
・Bメロ2
|Dm Am |G C |Dm Am |F-G-C |
・サビ2
|F C |G Am |F C |G E |
|F C |Dm-E-Am |Dm Am |F-G-Am |
|Dm Am |F-G-C | E|
・Bridge
|F#m7 D |E A |D A |E A |
|F#m7 D |E A |D A |E A |
|F#m7 D |E A |D A |E A |
|F#m7 D |E A |D A |G |
|D |Dm |
・サビ3
|N.C-F-C |G Am |F C |G E |
|F C |Dm-E-Am |Dm Am |F-G-Am |
|Dm Am |F-G-C |Dm Am |F-G-F ||
ギター弾き語りポイント
女性の方でもっと高く歌いたいという場合は、レギュラーチューニングのまま、カポタストを使ってキーの調整をしてください。
Amキーでギターをレギュラーチューニングのまま演奏すると、キーが半音上がります。
カラオケでいう+1です。
レギュラーチューニングのギターにカポタストを1フレットに付けると、さらにキーが半音上がり原曲キーより全音(1音)上がり、カラオケでいうと+2。
このように自分が1番歌いやすいキーで、なおかつ演奏も簡単にするためにもカポタストを使用しましょう。
とくに男性の方では原曲のキーが高くて歌えないという方もいるかと思いますが、そんな方でも大丈夫です。
それでは続いて、米津さんのキーが高くて歌えないという方のために、プレイキーEmでのコード進行を見てみましょう。
音域が高くて歌えない方/Play Key=Em
*4フレットにカポタスト装着で原曲キー
*簡単コードver.
・イントロ
|Em D |C G |C G |F#7 B |
|Em D |C G |C G |D G |
|N.C |
・Aメロ
|Em D |C G |C G |F#7 B |
|Em D |C G |C G |B Em |
・Bメロ
|Am Em |G C |Am Em |C-D-G |
・サビ
|C G |D Em |C G |D B |
|C G |Am-B-Em |Am Em |C-D-Em |
|Am Em |C-D-G |
・間奏
|Em D |C G |C G |F#7 B |
・Aメロ2
|Em D |C G |C G |F#7 B |
|Em D |C G |C G |B Em |
・Bメロ2
|Am Em |G C |Am Em |C-D-G |
・サビ2
|C G |D Em |C G |D B |
|C G |Am-B-Em |Am Em |C-D-Em |
|Am Em |C-D-G | B|
・Bridge
|C#m7 A |B E |A E |B E |
|C#m7 A |B E |A E |B E |
|C#m7 A |B E |A E |B E |
|C#m7 A |B E |A E |D |
|A |Am |
・サビ3
|N.C-C-G |D Em |C G |D B |
|C G |Am-B-Em |Am Em |C-D-Em |
|Am Em |C-D-G |Am Em |C-D-C ||
ポイント
こちらのEmキーでプレイする時は、4フレットにカポタストを付ければ米津さんが歌われている原曲キーになります。
そこで、もし高くで歌えないという方は、試しにカポタストを2フレットに付けて歌ってみてください。カラオケいうと-2になります。
カポタストを付けずに演奏したら、カラオケでいうと-4です。
出てくるコードはF#7とC#m7がスムーズ押さえれるようにしましょう。
ちなみにF#7やC#m7の7を省略し、F#、C#mとして演奏してもOK。
こちらも自分で歌いやすいキーを探してみてください。
演奏アドバイス・コツ
Amキーとして見た時、この曲は最後のコードがFコードで終わっています。
少し不安を残しつつ終わっていますね。
ライブや文化祭で演奏する際に、もっと終わった感じがほしいという方は、この最後のFコードをAmコードに置き換えてみてください。そうすることによって、もっと終わった感がします。
Amキーでプレイする場合は、明るく終わりたい方はCコード。暗く終わりたい方はAmコード。少し不安感を残しつつ終わりたい方は原曲通りFコードで終わりましょう。
Emキーでプレイする場合は、明るく終わりたい方はGコード。暗く終わりたい方はEmコード。少し不安感を残しつつ終わりたい方は原曲通りCコードで終わりましょう。
アコギ1本で演奏するなら、イントロはストロークでジャラァ~ンと伸ばしながらコードチェンジ、AメロBメロなどの曲の静かなところは自分でできる範囲のアルペジオ奏法で、サビは力強くストロークを交えてプレイしましょう。
演奏例/タブ譜&楽譜
*AmキーでのアルペジオAメロパターン例
*AmキーでのBメロパターン例
この曲はサビが3回くるので、音量の大きさや迫力は3回目のラストサビでピークにくるように演奏することも大切な意識です。

おわりに
今回のコードアレンジでは雰囲気は残しつつ、かなり弾きやすくなったかと思います。コードを押さえるのに慣れてきたら、音源に合わせて演奏してみましょう。