「ライオン」マクロスF/主題歌/歌:May’n/中島愛 作詞:Gabriela Robin/作曲:菅野よう子
今回取り上げる曲は、マクロスFの主題歌で有名な「ライオン」です。
とても壮大でカッコ良い曲であり、アニメの世界感を表すような宇宙感、こみ上げてくる闘志など、人により様々な感じ方があると思います。
もちろん楽器を演奏されているミュージシャンの方々や歌い手さんたちの歌唱力がすごいということは言うまでもないですが、中身のコード進行にも魅力はあるんじゃないかということで、この壮大感の根元を探っていきましょう。

コード進行
・イントロ
|Am |F/A |C/G |Gsus4 G |
|A |A/G |F |B♭ N.C|
|Am |Am |Am |Am |×2
・Aメロ
|Am |Bm |Am7/D |Am7/D Em |
|F |C/E |C |Bm7 B♭ N.C|
|Am |Bm |Am7/D |Am7/D Em |
|F |C/E |C |B |
|E |N.C |
・サビ
|Em |C |G |Dsus4 D |
|Bm7 |CM7 |Am7 |Am7/D B7/D# |
|Em |C |G |Dsus4 D |
|Bm7 |CM7 |Am7 |Bm7 |
|Esus4 |E |
・間奏
|Am |Am |Am |Am |×2
・Aメロ2
|Am |Bm |Am7/D |Am7/D Em |
|F |C/E |C |Bm7 B♭ N.C|
|Am |Bm |Am7/D |Am7/D Em |
|F |C/E |C |B |
|E |N.C |
・サビ2
|Em |C |G |Dsus4 D |
|Bm7 |CM7 |Am7 |Am7/D B7/D# |
|Em |C |G |Dsus4 D |
|Bm7 |CM7 |Am7 |Bm7 |
|Esus4 |Esus4 |CM7 |GM7 |
・間奏2
|Esus4 E-Esus4|E-Esus4 |Esus4 E-Esus4|E-Esus4 |×2
・Bridge
|Em |Bm7 |CM7 |G |
|Em7 |Em7/D |CM7 |Am7 |
|A/B |A/B |N.C |
・サビ3
|Em |C |G |Dsus4 D |
|Bm7 |CM7 |Am7 |Am7/D B7/D# |
|Em |C |G |Dsus4 D |
|Bm7 |CM7 |Am7 |Bm7 N.C|
|Esus4 |E |
・サビ4
|Fm |D♭ |A♭ |E♭sus4 E♭ |
|Cm7 |D♭M7 |B♭m7 |B♭m7/E♭ C7/E |
|Fm |D♭ |A♭ lE♭sus4 E♭ |
|Cm7 |D♭M7 |B♭m7 |B♭m7/E♭ C7/E |
|Fm |D♭ |A♭ |E♭sus4 E♭ |
|Cm7 |D♭M7 |B♭m7 |Cm7 N.C |
・Ending
|Fsus4 F-Fsus4|F-Fsus4 |D♭/F |E♭/F |
|Fsus4 F-Fsus4|F-Fsus4 |D♭/F |E♭/F |
|Fsus4 F-Fsus4|F-Fsus4 ||
解説
まずこの曲はテンポも速くて、N.Cの一瞬静かになるところも多いです。
しかも歌姫が2人で歌うということもあって時間的?にBメロはカットされております。
そして曲のキーの調性がわかりずらいです。
・イントロ
|Am |F/A |C/G |Gsus4 G |
|A |A/G |F |B♭ N.C|
|Am |Am |Am |Am |×2
初めのイントロ部分ですぐさまノンダイアトニックコードがでてきます。
GからAに行き、ベースが動いてFに行ってB♭でN.Cです。
徐々に転調していき、最後はAmのルートであるラの半音上のシ♭がルートであるB♭まで進行し、N.Cで静かになります。
問題は次の8小節からなるAmです。これで完全にキーはAmだろうと思うんですが、ギターで弾いてるリフのメロディに、ラ~ド~ミ~ソ~ファ#~、っとスケール音から外れたファ#の音が入ってます。
Amスケールではファ#ではなく、ナチュラルなファです。

ここで今回紹介するのがAドリアンスケールです。
Amスケールの、第6音のファを#させ、ラ、シ、ド、レ、ミ、ファ#、ソ、としたのがAドリアンスケールです。
このドリアンスケールは様々な楽曲で使われています。
例えば、B’zの「LOVE PHANTOM」のリフで、シ、レ、ファ#、ラ、ソ#、シ、レ、ファ#、というメロディのソ#のところです。
この曲はBmキーですので、シ、ド#、レ、ミ、ファ#、ソ、ラ、がスケール音です。
Bmスケールの第6音のソを#させ、ソ#としたのがBドリアンスケールです。
ドリアンスケールの聴こえ方としては、場面によってふわついた感や、緊張感高まる感、オシャレ感、などなど万能なスケールです。
さぁそんなカッコいいドリアンスケールのリフが終わってAメロです。
ですがさっそくAmのあとにBmが現れました。
ここでAmダイアトニックコードを確認してみましょう。
Am7 | Ⅰm7 |
Bm7♭5 | Ⅱm7♭5 |
CM7 | ♭ⅢM7 |
Dm7 | Ⅳm7 |
Em7 | Ⅴm7 |
FM7 | ♭ⅥM7 |
G7 | ♭Ⅶ7 |
Amダイアトニックコードの中では、Bから始まるコードはBmではなくBm♭5です。
「ライオン」ではドリアンスケールの名残のせいか、Bm♭5の5度の音のファがファ#となりBmになっています。
しかし聴いていておかしな感じはしません。
次はこのような進行があります。
lBm7 B♭ N.Cl
こちらはB♭に半音下がってキメ、つまり次のAmに行くための半音下がりのアプローチと理解していいでしょう(またはGメジャーキーのサブドミナントマイナー)。
ですが次にAメロの終わりではこのような進行です。
|C |B |E |N.C |
ここで登場するBは、Eに行くためのドミナントです。
それがⅡ-Ⅴ進行をしてAメジャーに転調かなと思いきや、サビの始まりでEmに進行ました。
ここでサビの進行を見てみましょう。
・サビ
|Em |C |G |Dsus4 D |
|Bm7 |CM7 |Am7 |Am7/D B7/D# |
|Em |C |G |Dsus4 D |
|Bm7 |CM7 |Am7 |Bm7 |
|Esus4 |E |
サビのコード進行では完全にEmまたはGメジャーのキーになっています。
実はAドリアンスケールとGメジャースケール(Em)は中身の音が一緒なんです。
Aドリアンスケール | ラ シ ド レ ミ ファ# ソ |
Gメジャースケール | ソ ラ シ ド レ ミ ファ# |
そしてサビの最後ではEとなり、それがドミナントとしてAmのリフにまたもどって行きました。ここまでのまとめは、AメロがAmキー、サビがGメジャー(Em)キーです。
次はサビ2が終わって、間奏2でEsus4とEの緊張感が高まる小節がきます。
・間奏2
|Esus4 E-Esus4|E-Esus4 |Esus4 E-Esus4|E-Esus4 |×2
ちなみにEsus4のsus4はラの音です。メジャー3rdのソ#とsus4の交互のカッコいいリフが鳴っています。
サビ3の終わりでもEとなり、そのまま半音上のFmに転調しました。
盛り上がりもピークになり、最後のキメが終わったあとにFsus4とFのリフがきます。
・Ending
|Fsus4 F-Fsus4|F-Fsus4 |D♭/F |E♭/F |
|Fsus4 F-Fsus4|F-Fsus4 |D♭/F |E♭/F |
|Fsus4 F-Fsus4|F-Fsus4 ||
このエンディングではD♭とE♭が垣間見えるため、A♭キーまたはFmとして落ち着き曲が終わると思いきや、Fsus4のまま終わっていきます。
興奮が高まったまま、ある意味最高の終わり方です。
音楽理論を超越したライオン
まさにこの曲は音楽理論を超越した名曲といえるのではないでしょうか。
チェックポイントとしましては、N.Cの使い方が絶妙、AmキーとEmキーの2つの顔を持つことによって曲の幅の広がりを感じます。