今回はギター初心者の方や、楽器を始めたばかりの方が、1日でも早く曲のコード進行や曲全体を暗記するために必要なことを解説していきます。
弾き語りをしたい方や、将来シンガーソングライター志望の方は、ぜひ活用してください。
当サイトの楽曲解説記事では随所で解説してきましたが、今回はまとめとして重要なポイントを絞ってご紹介します。
よく弾き語りをする上での曲のアレンジや、アコースティックギターの演奏方法を教えるのですが、よく相談されるのが、「ライブや発表会中にミスをすると巻き返せない」「忘れてしまってから思い出し覚え直すのに時間がかかる」「忘れてしまったらそもそも出だしのコードすら思い出せない」などなど。
そんな悩みのお任せください。
大事なポイントをアドバイスをしたら、皆さん決まって覚えるスピードが格段に上がりますし、記憶として残りやすくなります。
今回も、もっと皆さんが音楽LIFEをコストパフォーマンスよく過ごせるために、ご協力させていただきます。
ただ単に何の繋がりもなく曲を覚えるより、必要最低限の知識をコネクトさせたほうが、記憶は圧倒的に加速します。

楽曲の全体像
まずは曲の全体像の理解から務めましょう。
楽曲には、「イントロ」「Aメロ」「Bメロ」「サビ」「間奏」「Bridge(ブリッジ)」「エンディング(アウトロ)」などの様々なセクション(区間)があります。
ここでは平成大ヒット曲の1つ、アンジェラ・アキさんの「手紙~拝啓十五の君へ~」を取り上げ曲の構成を見てみましょう。
曲の構成
NHKみんなのうたでも取り上げられ、合唱コンクール中学の部課題曲でも活躍したアンジェラ・アキさんの「手紙~拝啓十五の君へ~」の曲の構成は
↓
・Aメロ
↓
・Bメロ
↓
・サビ
↓
・間奏
↓
・Aメロ2
↓
・Bメロ2
↓
・サビ2
↓
・間奏2
↓
・ブリッジ
↓
・大サビ
↓
・エンディング
↓
・エンディングAメロ
曲を音楽理論的に解釈
次に必要となる知識は、必要最低限の音楽理論的なアプローチです。

例えば曲のKeyの判別とは、対象の曲が主に何のスケール(音階)で構成されているかというのを理解するということです。
楽器初心者の方は何かと音楽理論を避けがちですが、一度理解してしまえば簡単です。
音楽理論は数学と一緒で一度覚えてしまえば、後々も応用して使える知識です。
ここではさらに、曲を覚えることにプラスαになる音楽理論をご紹介します。

スケール
楽曲には主に使われているスケール(音階)や、そこから生まれるダイアトニックコードがあります。
まずは初心者の方が曲のキーを判別する方法について、改めて解説します。
弾き語りをしたい方などは、コード譜が記載されたネットのページや、演奏動画、バンドスコア、などを参考に練習されるかと思いますが、ここではコード進行から簡単に曲のキーを調べる方法を教えます。
そのための準備体操として、スケール(音階)についても理解しておきましょう。
例えば、Cメジャースケールの曲があるとします。
Cメジャースケールの「C」とは、音名の「ド」です。
つまり「ド レ ミ ファ ソ ラ シ」で構成されている曲をCメジャースケールの曲と言えます。
さらにこのCメジャースケール(ド レ ミ ファ ソ ラ シ)を使って作られる7つのコードをダイアトニックコードと言います。
ダイアトニックコード
次に、Cメジャースケールで作られるダイアトニックコードを理解しましょう。
*Cメジャーダイアトニックコード
ⅠM7 | CM7 | T |
Ⅱm7 | Dm7 | SDⓢ |
Ⅲm7 | Em7 | Tⓢ |
ⅣM7 | FM7 | SD |
Ⅴ7 | G7 | D |
Ⅵm7 | Am7 | Tⓢ |
Ⅶm7♭5 | Bm7♭5 | Dⓢ |
*ⓢ・・・代理
*T・・・トニック(安定)
*SD・・・サブドミナント(少し不安定)
*D・・・ドミナント(不安定)
こちらの表がCメジャーダイアトニックコードになります。
この7つのコードは全て「ド レ ミ ファ ソ ラ シ」から構成されています。
このダイアトニックコードを理解してしまえば、様々なメリットがあります。
まずコード進行の雰囲気が理論的に解釈できるという点です。
ダイアトニックコードにはそれぞれの響きが持つ特性があります。
Cメジャーダイアトニックコードでは、ⅠM7(1度メジャーセブンス)のコードが最も安定した響きです。
例えば「F→G→C」という進行があったとします。
Fはサブドミナントで少し不安定な響き、Gはドミナントで不安定な響き、Cはトニックで安定した響き、つまりFコードからGコードに向けて不安が高まりCコードで安定するという解釈ができます。
次に「C→G→Am→F」というコード進行があっととしましょう。
このコード進行は、安定したトニックのCから、不安定なドミナントのG、暗く安定したAm、少し不安定なF、というコード進行です。
このコード進行を数字(ディグリーネーム)に置き換えてみましょう。
「Ⅰ→Ⅴ→Ⅵm→Ⅳ」という風に変換できます。
さらにこちらを「1→5→6→4」という風に置き換えると、コード進行を数字に直して覚えることも可能です。
ダイアトニックコードを理解すれば、曲のキーが変わってもすぐに対応できるということと、コード進行をパターンとして認識しやすいということです。
コード進行から曲のキーを調べる
試しに、アンジェラ・アキさんの「手紙~拝啓十五の君へ~」の楽曲を取り上げ、コード進行から曲のキーを判別してみましょう。

|A♭ |E♭ |Fm |D♭ |
|A♭ |E♭ |D♭ |A♭ |
メジャーコードが全音(1音)間隔で隣あっています。
そこから逆算して考えると、曲のキーはⅠのA♭になります。
ⅠM7 | A♭M7 | T |
Ⅱm7 | B♭m7 | SDⓢ |
Ⅲm7 | Cm7 | Tⓢ |
ⅣM7 | D♭M7 | SD |
Ⅴ7 | E♭7 | D |
Ⅵm7 | Fm7 | Tⓢ |
Ⅶm7♭5 | Gm7♭5 | Dⓢ |
*ⓢ・・・代理
*T・・・トニック(安定)
*SD・・・サブドミナント(少し不安定)
*D・・・ドミナント(不安定)
ノンダイアトニックコード
続いて「手紙~拝啓十五の君へ~」のサビのコード進行を見てみましょう。
|A♭ |E♭ |Fm |Cm |
|D♭ |A♭ |G♭ |E♭ |
|A♭ |E♭ |Fm |Cm |
|D♭ |A♭ |B♭ D♭|A♭ |
|B♭ D♭|A♭ |
|C |G |Am |Em |
|F |C |B♭ |G |
|C |G |Am |Em |
|F |C |D F |C |
|D F |C |
つまり、「♭Ⅶ」と「Ⅱ」ということです。
*Cmダイアトニックコード
Ⅰm7 | Cm7 | Tm |
Ⅱm7♭5 | Dm7♭5 | SDmⓢ |
♭ⅢM7 | E♭M7 | Tmⓢ |
Ⅳm7 | Fm7 | SDm |
Ⅴm7 | Gm7 | Dm |
♭ⅥM7 | A♭M7 | SDmⓢ |
♭Ⅶ7 | B♭7 | SDmⓢ |
*ⓢ・・・代理
*Tm・・・トニックマイナー(暗く安定)
*SDm・・・サブドミナントマイナー(暗く少し不安定)
*Dm・・・ドミナントマイナー(暗く不安定)
このCmダイアトニックコードの「♭Ⅶ」が登場したということです。
こちらのコードの機能はサブドミナントマイナーとなり、暗く少し不安定な響きとなります。
サブドミナントマイナーコードはよく登場するノンダイアトニックコードなので、要チェックです。
ではもう1つのノンダイアトニックコードのDコードはどこからきたかといいますと、平行調のAmスケールから発展した、Aメロデックマイナーダイアトニックコードから登場しました。
*Aメロディックマイナーダイアトニックコード
ⅠmM7 | AmM7 | Tm |
Ⅱm7 | Bm7 | SDmⓢ |
♭ⅢM7#5 | CM7#5 | Tmⓢ |
Ⅳ7 | D7 | SDm |
Ⅴ7 | E7 | D |
Ⅵm7♭5 | F#m7♭5 | Tmⓢ |
Ⅶm7♭5 | G#m7♭5 | Dⓢ |
*ⓢ・・・代理
*Tm・・・トニックマイナー(暗く安定)
*SDm・・・サブドミナントマイナー(暗く少し不安定)
*Dm・・・ドミナントマイナー(暗く不安定)
つまりこのDコードもサブドミナントマイナーということになります。
もっと追及すれば、Dコードのコードトーン(構成音)のファ#から、Fコードのコードトーンのファ、Cコードのコードトーンのミへ、コード進行が進むにつれて半音づつ下降するというメロディラインができあがります。
ファ#→ファ→ミ
アンジェラ・アキさんはこのメロディの動きを狙ったのもあり、Dコードの選択をしたのかもしれません。
音楽理論初心者の方は、ナチュラルマイナースケールの解釈から始めると良いでしょう。
簡単に演奏するには
次にギターでの演奏についてです。
基本的には自分自身が演奏したいと思える曲を練習することが、なにより早く覚えるコツでもありますが、極端にテンポが速い曲や、コードチェンジのリズムが裏拍ばかりの曲はおすすめしません。
続いては、アコースティックギターで演奏するには外せないアイテムの「カポタスト」をご紹介します。
カポタスト
カポタストとは、ギターのネックに装着して、ギター自体のチューニングを変えることのできるアイテムです。
|A♭ |E♭ |Fm |Cm |
|D♭ |A♭ |G♭ |E♭ |
|A♭ |E♭ |Fm |Cm |
|D♭ |A♭ |B♭ D♭|A♭ |
|B♭ D♭|A♭ |
つまり「#1」です。
つまりカポタストを1フレットに付けると、全てのコードが半音づつ下がったコードを演奏することになります。
|G |D |Em |Bm |
|C |G |F |D |
|G |D |Em |Bm |
|C |G |A C |G |
|A C |G |
そうすることによって、コードを押さえるのが楽になり、無意識的に演奏しやすくなり、歌いやすくなります。
おわりに
いかがだったでしょうか。
ただ漠然とコード進行を覚えるより、各段にスピードアップで覚えることができます。
それに加え、音楽理論的な解釈をすることによって記憶の定着度もかなり変わってきます。
音楽理論が理解できれば、見方が変わり、一気に様々な情報が飛び込んできます。
ぜひ皆さんも、そんな素敵な音楽の世界を自分の目で見るために、少しずつでも良いので知識の習得に励んでください。