今回取り上げる曲は米津玄師さんとDAOKOさんが歌う「打上花火」です。映画の主題歌としても有名です。
この曲は米津さんの楽曲の中で特にヒットした曲でもあります。
そんな「打上花火」の持つ魅力を紹介しながら、コード進行を解説していこうと思います。
作詞作曲:米津玄師
まずはコード進行を見てみましょう。
原曲のキーはG♭(F#)キーですが、見やすいようGキーで表記します。
ギターやベースの方は、レギュラーチューニングより半音下げプレイで原曲キーとなります。
コード進行
・イントロ
|C D |Em G |x4
・Aメロ
|C D |Em G |C D |Em G |
|C D |Em G |C D |Em G |
・Bメロ
|C D |Em G |C D |Em G |
|C D |Em G |C D |G N.C |
・サビ
|C D |Em G |C D |Em G |
|C D |Em G |C D |C-D-Em |
・間奏
|C D |Em G |C D |Em N.C |
・Aメロ2
|C D |Em G |C D |Em G |
|C D |Em G |C D |Em G |
・Bメロ2
|C D |Em G |C D |Em G |
|C D |Em G |C D |
*|Cadd9 |Cadd9 |Dsus4 |D N.C |
・サビ2
|C D |Em G |C D |Em G |
|C D |Em G |C D |C-D-Em |
・Bridge
|C |C |D |D |
|Em |Em |D |Dsus4 |
・間奏2
|C D |Em G |C D |Em G |
・Aメロ3
|C D |Em G |C D |Em G |
|C D |Em G |C Dsus4 |D N.C |
・サビ3
|C D |Em G |C D |Em G |
|C D |Em G |C D |C-D-Em |
・Ending
|C D |Em G |C D |Em G |
|C D |Em G |C D |C-D-Em |
|C D |Em G |C D |Em G |
|C D |Em G |C D |C-D-Em |
・Ending2
|C D |Em G |C D |Em ||
コード進行解説
まず見てわかる通りにこの曲は、
|C D |Em G |の進行がほとんどで、それをループしています。
ほとんど循環コードです。しかもダイアトニックコードの主要4コードを使っています。
コード進行自体はとてもシンプルで繰り返しです。
|Ⅳ Ⅴ |Ⅵm Ⅰ |
メジャーダイアトニックコードの<4-5-6-1>という進行がメインとなっています。
コードの機能面から言いますと、少し不安なC(Ⅳ)から不安で緊張感あるD(Ⅴ)へ、
そして次の小節で暗く落ち着くEm(Ⅵm)で次がトニックのG(Ⅰ)となり明るく落ち着くはずが、Gコードがセカンダリードミナントとなり、Cコードにつながって行くという感じですね。
4番目(Ⅳ)のコードで始まり、1番目(Ⅰ)のコードで終わる進行だとセカンダリードミナントを使って繰り返しやすいということを覚えておきましょう。
米津玄師の曲作り
ちなみにこの曲はシンプルなコード進行で繰り返しだけではなく、リズムパターンにも一癖あります。
|C D |Em G |
このコード進行のDとGのところで、コードチェンジが行われているのは、
3拍目の裏で行われています。
体感してもらうために1,2,3,4と曲を聴きながら手拍子をしてみましょう。
ちょうど3のところで手を叩き、離れたところでコードチェンジが行われているのがわかるはずです。
遅れて、ジャ、ジャ、と聴こえるDとGの音が、聴き手の心臓の鼓動音のよう鳴り響いてます。
聴き手までも、切なく苦しくなるようなこのリズムパターンもこの曲の持ち味になっています。
続いては歌についてです。
まず、歌の1番のAメロ、Bメロでは米津さん出てきません。サビから合流してます。
DAOKOさんがメインボーカルで、米津さんが脇役に徹しています。
注目ポイントは歌の1番のAメロ、Bメロと、2番のAメロ2、Bメロ2です。
まるでメロディーラインが違います。
大サビやラストサビに行く前のBridge部分で新しいメロディラインが出てくることはよくありますが、ほとんどの曲は歌の1番と2番のメロディラインはそれほど変わりません。
ですが「打上花火」ではAメロ、Bメロと同じコード進行の上に全然違うメロディラインを乗せ、聴き手を飽きさせることなくサビまで連れて行ってくれます。
続いて注目してほしいポイントがサビ前のN.Cの部分です。
一瞬静かになり、まるで本当に打上げ花火が上がったかのような錯覚にとらわれます。
見事に映画の内容と、歌詞と一致した作りになっています。
曲調自体にも注目してみましょう。
Aメロ、Bメロでは特にメロディや、バックのサウンドに盛り上がりはなく、せつなく淡々と進んでいきます。
ですがN.C後のサビでは一気に盛り上げにかかっています。
この曲調のメリハリが、サビを待ち遠しくさせるポイントの1つです。
しかも最後のAメロ3の部分では、次にBメロ3に行くかと思いきや、すっ飛ばしてサビ3に行きます。
最後はたたみかけるように聴き手にサビが襲ってきます。
そしてEnding2では、まるで物語が1つ終わったかのように、切なく、暗いEm(Ⅵm)で終わっています。
ここで忘れてはいけないポイントが1つあります。
サビ2に入るまでの4小節です。上記のコード進行では*印がついているところです。
*|Cadd9 |Cadd |Dsus4 |D N.C |
早くサビ聴きたいなぁ、となっているところに焦らしの4小節という効果ももちろんあります。
こういう焦らしの部分はたいていラストサビなどの前にきますが、もうサビ2の前で入りました。
しかもラストはラストでたたみかけるようにサビが襲ってきます。
まるで瞑想モードのような4小節の進行はCadd9から始まるのですが、ドミナント機能を持つDコードのルート音のレがCに加わりCadd9となり、本来なオシャレコードとして活躍するはずが、どこか切なさを持ち合わせるような登場に仕方から、不安で緊迫感があるDコードに進行。最後はお決まりのN.Cも出てきて、一瞬静かになってサビが始まります。
魅力ポイント
「打上花火」の魅力ポイントをまとめておきましょう。ミュージシャンの方は、ぜひ色んなマジックを自分の曲に取り入れてみましょう。
・1番、2番のAメロ、Bメロのメロディーの違い
・曲調のメリハリ