耳コピのコツ

耳コピをするためのイヤフォンと譜面

今回は”耳コピ”のコツについて解説していきます。耳コピとは、楽曲で実際に使用されている音を聴き取り楽器を使って再現または譜面に書き起こす技術のことです。

耳コピと聞くと、「幼少期から楽器と触れ合っていないとできない」「耳コピができるのは一部の天才だけ」と思っている方もおられるかもしれません。

しかし、耳コピは訓練しだいで習得可能な技術です。初めて耳コピにチャレンジする方でも、コツを掴んでしまえばどんどん速くできるようになります。

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耳コピと音楽理論

実は耳コピを行うにあたって、音楽理論の知識を使うことでより速く効率的に音を聴き取ることが可能となります。まずは、耳コピと音楽理論の密接な関係を見ていきましょう。

絶対音感と相対音感

幼少期から音楽の訓練を受けていた方の中には、”絶対音感“をお持ちの方もいます。絶対音感とは対象の音を聴いたときに、その音の高さを記憶に基づいて認識する能力です(後天的な能力であり、絶対音感の精度は人それぞれ)。

絶対音感保持者の記憶には、ほとんどケースで平均律がインプットされています。平均律とは、現代のポピュラーミュージックに使用されている音律です。もちろん皆さんが普段耳にする音楽も、多くの場合平均律が使用されています。

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つまり絶対音感を持っている方であればメロディを聴いた時に、ドレミファソラシドまたはそれに#や♭がついた形で認識できるということです。

絶対音感がなければ耳コピできないのかというと、決してそうではありません。絶対音感とは別に、相対音感と呼ばれる能力があります。相対音感とは基準となる音との相対的な音程によって、音の高さを識別する能力です。

AとBどちらの音が高いかといった相対音感は、ほとんどの人が持っているかと思います。しかし地道な音楽訓練を積み重ねることでメロディの音程(複数の音)を、インターバルに表し把握することができるようになるのです。

例えば「レ、ミ、ファ#、ソ、ラ、シ、ド#」と聴いた時、絶対音感をお持ちの方は「Dメジャー・スケール」と認識することが可能。そして相対音感を訓練し磨き上げた方でも、音名は認識できませんが「メジャー・スケールの音階」ということは把握できます(または移動ドで、ドレミファソラシと把握)。

つまり基準となる音、ここでは1番最初に鳴っているレを、お手元にある楽器を使い探し当てることで、瞬時にDメジャー・スケールと認識することが可能です。

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相対音感×音楽理論=耳コピは加速する

相対音感を鍛えることで把握できるのは、音階だけではありません。コード進行もまた、相対音感を鍛えることで把握することが可能です。

D→A→Bm→Gというコード進行があった場合、絶対音感の精度が高い方はメロディを認識するようにコード進行も瞬時に認識することができます。

対して相対音感が優れた方の場合でも、Ⅰ→Ⅴ→Ⅵm→Ⅳというようにダイアトニック・コードのディグリーネームで把握することは可能です。

つまりここまで相対音感を磨き上げるためには、現代ポピュラーミュージックの音楽理論は習得しておくべき知識となってきます。もちろん音を相対的に把握するための知識ともなりますが、なんといってもあらかじめ予測がたてられることが大きいです。

ある楽曲のメロディを耳コピしようとした場合、キーの判別から使用されている音階を予測します。多くの楽曲では、使用されているメロディはそのキーに合った”スケール+α”。

Cメジャー・キーの楽曲で、C→G→E/G#→Amといったコード進行上のメロディを耳コピする場合、Cメジャー・スケールを基準に音を探せばより速く耳コピすることができる場合が多いです。

しかしE/G#コードはCメジャー・ダイアトニックには無いノンダイアトニック・コード。このようなノンダイアトニック・コードの箇所では、鳴っているメロディもCメジャー・スケール外が使用されている可能性があります。

さらに予測をたてるとここでのE/G#コードは、Amコードへより劇的に進行するためのドミナント・コード。このE/G#コードは、Aハーモニック・マイナーから抜擢されたコードと判断できます。

Cメジャー・スケールとAマイナー・スケールでは構成音が同じですが、Aハーモニック・マイナー・スケールではソがソ#へ変化。E/G#コードの箇所では、メロディでソ#が鳴っている可能性があると予測できます。

このように音楽理論の知識があれば、様々な角度から予測をたてることが可能です。特定の音がどれくらいの長さか、小節のどこから始まっているかなど、音符の種類や休符、拍子の知識も必要となってきます。

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定番コード進行の雰囲気を記憶

楽曲のコード進行を耳コピしたいという方でしたら、定番コード進行の知識をあらかじめ習得しておくことも大切です。例えばⅠ→Ⅴ→Ⅵm→Ⅲm→Ⅳ→Ⅰ→Ⅳ→Ⅴといった、世界中で愛されるコード進行【カノンコード】という進行があります(Cメジャーキーで表すと、C→G→Am→Em→F→C→F→G)。

そしてこのカノンコード進行の持つ雰囲気を、メジャー・スケールを相対的に感じ取るように記憶しておきましょう。楽曲にカノンコードが元となったコード進行があった場合、多くのケースではコードの長さは2拍または1小節づつです。

楽曲のサビで使用されているコード進行をカノンコードと感じた場合、対象キーのダイアトニック・コードから導き出すことでより効率的に耳コピすることができます。また反対にカノンコード進行上で、ノンダイアトニック・コードが使用されている箇所も瞬時に把握することが可能です。

アンジェラ・アキさんの代表曲『手紙~拝啓十五の君へ~』では、サビでのコード進行はカノンコードが元となった進行です。しかしまるっきりカノンコードと同じではなく、最後から2番目のコードであるⅣが♭Ⅶになっています。このようにカノンコードを基準とし、相対的に違いを聴き取ることも可能です。

また『手紙~拝啓十五の君へ~』のように、使用されているメロディから♭Ⅶそしてコードの機能はサブドミナント・マイナーと導き出すこともできます。もちろんそのためにも、音楽理論の知識は必須です。

ヒット曲に多く使用される定番コード進行と呼ばれる哀愁コードユーロビート進行などまだまだあり、それぞれ雰囲気が大きく違います。まずはダイアトニック・コードからコード進行を分析し、実際に対象のコード進行が使用されている楽曲を聴いてみましょう。

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耳コピのはじめかた

それではこれより、耳コピ実践編へと進んでいきましょう。用意するのは、普段お使いになる楽器だけです。ギターをお使いの方は、アコースティックギターまたはエレキギターどちらでもかまいません。

また対象楽曲の本人演奏またはLive映像がある場合は、耳コピ+目コピで取り組むことも効果的です。

目コピの重要性

なぜ目コピが重要かといいますと、基礎的なギター奏法が身についていない方の場合、運指がイメージできない恐れがあるからです。そのため、本人演奏映像がある場合は積極的に利用しましょう。

また1~4小節程度の単体フレーズを、日頃から練習しておくことも、耳コピ上達につながる大切なポイントです。ギターには、様々な奏法パターンがあります。

チョーキングをしているのか、それともスライドをしているのかなど、サウンドだけを聴いて運指を判断するためにも、様々な奏法パターンに触れ合い、サウンドとともに記憶しておくことも重要です。

耳コピはトップノートから

まず耳コピの入口としまして、聴き取りやすい高音(トップノート)である、単音メロディから耳コピをしてみましょう。または楽曲のモチーフやリフなど、曲中に何度も繰り返されるメインテーマでもOK。そしてギターtab譜や楽譜を用意し、随時メモを取りながら進めていきます。

また耳コピを行う前に、キーの判別を行うことはとても効率的。キーを判別する手段として、鳴っている楽曲に対して単音またはスケールをぶつけてみてください。例えばユニゾンやハモる音がド・レ・ミ・ソ・ラ・シと認識できれば、キーはCメジャーかGメジャーのどちらかです。

そして、まずは耳コピをするメロディの小節数を把握。それを1小節づつ分けて聴き取っていきます。最初に音符や休符の長さ、リズム譜をメモすることも有効です。

続いてメロディの第1音目から1拍目または2拍目までを集中的に繰り返し聴き込み、お手元の楽器を使ってユニゾンになるポジションを探します。その作業を繰り返していき、1小節づつ完成させていきましょう。

耳コピでコードを捉える

コード進行を耳コピする時こそ、あらかじめキーを判別しておきましょう。そしてキーのダイアトニック・コードから、合うコードを探し出します。もちろんノンダイアトニック・コードの可能性あるでしょう。そのような場合は、実際に楽器を使ってユニゾンする音程を探しながら、前後のコードから理論的なアプローチをすることも効果的です。

そして、onコードの存在も忘れてはいけません。突如コード進行のチェンジが速まったと感じる箇所、ベースが決まった拍数で動いている時などでは、コードのベース音が変わりonコードとなっていたりします。とくにクリシェとなっているコード進行では、正確なコード表記をするためにも音楽理論の知識は必須です。

近頃では楽曲をインストールすることで、自動的にコード進行を抽出してくれるアプリも無料でダウンロードすることができます。耳コピにチャレンジする人によっては、自分で耳コピしたコードと見比べてみることでより正確なコード表記へ近づけるかもしれません。

コード譜を簡単に作ることができたら、と思ったことありませんか?Chord Trackerはお手持ちのスマートデバイス内にある曲のコード進行を自動解析・表示し、コードを使った演奏、練習をサポートするアプリです。

引用:ヤマハ Chord Tracker

バンドスコアや楽譜が間違っていることはある

実は市販のバンドスコアや楽譜は、作曲者の意図とは異なったコードが表記されているケースがあります。ネット上も含め、掲載されているコード進行はあくまで採譜者が解釈したモノ。つまり作曲者が監修してない限り、正確なスコアや楽譜でない可能性もあるのです。

よくあるケースでは、ギタリストでない方が採譜した譜面やtab譜は、演奏者本人とは異なるポジション、または極端に複雑となる運指でtab譜表記されていることはよくあります。

またコード表記においても、onコードの箇所などでは掲載元によって違いが出てくることはよくあるのです。例えば、対象の小節にE7sus4コードと表記された譜面があるが、もう一方はBm7/Eコードと表記されているケースなどもあります。

E7sus4 ミ・ラ・シ・レ
Bm7/E シ・レ・ファ#・ラ/ミ

また楽器演奏者はAmコードを弾いているが歌メロにソが入っているため、コード表記はAm7となっているケースなど。正解は作曲者本人しかわかりませんが、理論的なアプローチをすることでコード表記も正解に近づくことはたしかです。

まずは、自分のパート楽器が弾いている音を聴き取りましょう。

おわりに

今回は耳コピと音楽理論の関係性、そして初めての耳コピ実践編を解説しました。耳コピは繰り返せば繰り返すほど、どんどん速くできるようになっていきます。

はじめはとても時間がかかるかもしれません。しかし正確な耳コピができるようになれば、市販のバンドスコアやネット上掲載されている譜面やコード表に頼らなくて済みます。また市販スコアや楽譜の間違いにも惑わされません。