今回は、これからジャズ・ギターを始めようと思っている方のためにおすすめの練習テーマ「ジャズ・ブルース」をご紹介します。
ジャズとブルースは別のジャンルではありますが、ジャズのルーツと言われていることや、互いに影響を及ぼしながら進歩してきた歴史から、この2つはとても密接な関係です。
またロックのルーツもブルースと言われているほどで、ジャズの思考法もロックを弾くときに役立ってくれるでしょう。
ブルースとジャズのコード進行
まずセッションの入門でもあるブルース進行と、ジャズ・ブルース進行の2つのコード進行を比べてみましょう。
ブルース進行
ここではブルース進行の代表でもある、Aブルースを取り上げます。
|A7 |D7 |A7 | |
|D7 | |A7 | |
|E7 |D7 |A7 |E7 |
このAブルースでアドリブ・ギターにチャレンジするとっかかりとして、Aマイナー・ペンタトニック・スケールが代表ではないでしょうか。
Aマイナー・ペンタトニック・スケールだけで自由にアドリブが弾けてきたという方は、Aメジャー・ペンタトニックも組み合わせてみてください。
ブルース進行に対してメジャー+マイナーと組み合わせることで、さらにアドリブのイメージも広がっていくでしょう。
ジャズ・ブルース進行
続いてはジャズ・ブルース進行を見てみましょう。ブルース進行と比較してみてください。
|F7 |B♭7 |F7 |Cm7 F7 |
|B♭7 |Bdim|F7 |Am7♭5 D7 |
|Gm7|C7 |F7 D7 |Gm7 C7 |
こちらはFジャズ・ブルース進行です。ジャズ・ブルースではFキーが多く使用されています。
この進行を見比べやすいよう、Aキーに移調してみましょう。
|A7 |D7 |A7 |Em7 A7 |
|D7 |D#dim|A7 |C#m7♭5 F#7|
|Bm7|E7 |A7 F#7 |Bm7 E7 |
ブルース進行の形跡はありますが、少しコードが複雑になりました。歌がメインだったブルース進行から、楽器がメインとなるジャズ・ブルースに変化するにあたりコード進行も複雑化したのです。
ジャズ・ブルース進行へのスケールアプローチ
続いては、ジャズ・ブルースのコード進行を解説していきながら、どのようなアプローチをしてアドリブ演奏をすればいいのか解説していきます。
・ブルース
|A7 |D7 |A7 | |
|D7 | |A7 | |
|E7 |D7 |A7 |E7 |
・ジャズ・ブルース
|A7 |D7 |A7 |Em7 A7 |
|D7 |D#dim|A7 |C#m7♭5 F#7|
|Bm7|E7 |A7 F#7 |Bm7 E7 |
D7へのⅡ→Ⅴ
ブルース進行とジャズ・ブルース進行の違いとして、最初に登場するのが4小節目のEm7→A7です。この進行はD7コードをトニックと見立てたⅡ→Ⅴ(ツーファイブ)進行になります。
*Dメジャー・ダイアトニック・コードではEm7がⅡm7、A7がⅤ7です。コードの機能がサブドミナント(少し不安)→ドミナント(不安)→トニック(安定)と進むことを「ドミナント・モーション(解決へ向かう)」といい、別のコードを仮トニックと見立ててドミナント・モーションすることを「セカンダリー・ドミナント」といいます。
このようなⅡ→Ⅴ進行はジャズでは多く使用されています。もちろん「これが正解だ」というフレーズがあるわけではないです。ですが様々なプレイヤーが素晴らしいⅡ→Ⅴフレーズを演奏しておりますので、コピーして使用しているスケールを解析するというプロセスを踏むことがレベルアップにもつながるでしょう。
まずDコードをトニックと見立てたA7コードと考え、Aミクソリディアン(キー全体から考えDメジャー・スケールでもよい)を柱にアドリブをとってみるのもよいと思いま。
間に挟まれているdimコード
続いての相違点は、D7→D#dim→A7というコード進行です。D7とA7の間にD#dimが出現しました。
一見つながりが見えてこなさそうですが、間にdimコードを挟むことでスムーズにコード進行をつなげることができます。D7とD#dimの違いは、実はルートのレとレ#だけであってその他のコード・トーンは同じです。
ルート音だけ半音上がり進んでいき、さらに楽曲のキーから見るとその音が(ここではレ#)がブルース特有の音といわれるブルー・ノートあたります。
さらにこのレ#は、A7コードの5度の音にあたるミの半音したにあたります。さらにコード進行を滑らかにしようと思ったら、A7/Eコードと変換すればベース音が半音違いで進んで行かせることもできます。
*D7→D#dim→A7/E
ベース音がレ→レ#→ミと進行
dimコードの小節は、他にもアプローチがありますが、dimスケールでアドリブをとる練習から始めるとよいでしょう(コンディミでも可)。
マイナーコードへのⅡ→Ⅴ
続いての相違点は、C#m7♭5→F#7→Bm7という8小節目から始まるコード進行です。こちらはBm7をトニックと見立てたⅡ→Ⅴ進行になります。
ただF#7コードは、Bマイナー・ダイアトニックからではなく、Bハーモニック・マイナーから登場したコードです。
つまりC#m7♭5→F#7の進行では、Bm7コードへ進行するため、Bハーモニック・マイナー・スケールを使ってアドリブをとってみましょう(ドミナント・モーションにおいて、オルタード・スケールもよく使用されます)。
A7へのⅡ→Ⅴ
続いての相違点は、Bm7→E7→A7という9小節目から始まるコード進行です。こちらはA7へのⅡ→Ⅴ進行になります。
つまりここではシンプルにAメジャー・スケールを使いA7に向かい、A7ではAマイナー・ペンタトニック・スケールに切り替えるという手法でアドリブをとるのもよいでしょう。
Bm7へのドミナント
続いての相違点は、11小節目に出てくるF#7です。こちらは次のBm7を仮トニックと見立てたドミナントコードです。
つまりこちらもマイナーコードへ解決するために、Bハーモニック・マイナーで対応しましょう。
最終小節でⅡ→Ⅴ
最後の相違点は、12小節目で出てくるBm7→E7です。こちらは第1小節へ戻るための、A7へのⅡ→Ⅴ進行になります。
この場合もEミクソリディアンまたはAメジャー・スケールでアドリブをとってみましょう。
おわりに
今回はジャズに挑戦しようと思っている方に、ジャズ・ブルースのコード進行、そしてアドリブのアプローチ法を解説してみました。
今回ご紹介したアプローチ法はほんの1例であり、まだまだたくさんのアプローチ法があります。まずはコードに対して、スケールを切り替えていく頭の体操から始めてみてください。コード・トーンを追うだけでもかまいません。