循環コードの名曲4+2選/コード進行は繰り返すだけ

循環する階段

今回取り上げるテーマは、循環コードです。循環コード進行とはその名の通り、曲中に繰り返されるコード進行を指します。つまり一定のコード進行が、曲中にほぼループされています。

そんな簡単な作曲法では大した曲は作れないだろうと思う方もおられるかもしれませんが、決してそんなことはありません。循環コードは、聴き手の耳に対して気持ち良くさせる効果があります。

もちろん個人の趣味趣向にもよりますし、音楽自体そういう効力はもっていますが、人間はハーモニーのある響きとリズムを一定時間聴くと、脳に快楽ホルモンが流れます。
とくに循環コードはミュージシャンではない一般の方たちにも、なんとなく繰り返されているのが無意識的に分かりやすく、曲にノリやすいのです。
一方、循環コードのデメリットとしましては、曲の展開の幅が狭くなるというところです。ですが、曲を複雑にすればするほどいいのかといいますと、今度は逆に記憶に残りにくくなります。
循環コードの曲は、やはりどこかキャッチーさがあり、次の展開が予想しやすく、一言でいえば、わかりやすく記憶に残りやすい楽曲が多いです。

ここではなるべく皆さんが知っていそうなヒットソング、名曲を取り上げて、コード進行とともに紹介していこうと思います。

「We Are Never Ever Getting Back Together」Taylor Swift

まずはこちら、テラスハウス主題歌で一躍日本でも人気となった、テイラースウィフトさんで「We Are Never Ever Getting Back Together」です。

テイラースウィフトさんの「We Are Never Ever Getting Back Together」のメインの循環コード進行はこのようになっています。

|Cadd9  G |Dsus4  Em |

この4つです。

曲のキーは、Gメジャーキーになります。Gメジャーダイアトニックコードも見てみましょう。

・GM7 / ⅠM7 / トニック

・Am7 / Ⅱm7 / サブドミナントⓢ

・Bm7 / Ⅲm7 / トニックⓢ

・CM7 / ⅣM7 / サブドミナント

・D7 / Ⅴ7 / ドミナント

・Em7 / Ⅵm7 / トニックⓢ

・F#m7♭5 / Ⅶm7♭5 / ドミナントⓢ

*ⓢ・・・代理

使われているコードは、ⅠのGコード、Ⅳadd9のCadd9コード、Ⅴsus4のDsus4コード、ⅥmのEmコードです。
 
始まりは、Ⅳadd9のCadd9から始まり、GメジャーダイアトニックコードのボスのGコードへ、そしてⅤsus4のDsus4コードから、暗く落ち着くⅥmのEmコードへ向かって1周です。
 
・Ⅳadd9-Ⅰ-Ⅴsus4-Ⅵm
これを数字に直すと、
 
・4-1-5-6
よん、いち、ご、ろく、という進行をループしています。
 
コード進行は循環コードでずっとループしているのに、歌い方や、楽器の伴奏の変化で、聴き手を飽きさせません。とくにサビのフレーズは耳に残るフレーズです。
 
ダイアトニックコードにはそれぞれ機能があります。コードの機能とは何かといいますと、対象のコードが、対象のキーの楽曲の中での響きの特性です。
 
「We Are Never Ever Getting Back Together」は、キーがGメジャーの曲です。つまりポピュラーミュージック音楽理論的に言えば、Gコードが鳴っている時が、曲が1番落ち着き、安定している時です。
 
もう1度進行を見てみましょう。
・Ⅳadd9ーⅠ-Ⅴsus4ーⅥm
 
Ⅳはサブドミナントで少し不安定、Ⅰはトニックで安定で落ち着き、Ⅴはドミナントで不安定、Ⅵmはトニック代理で暗く落ち着きます。
 
テイラースウィフト「We Are Never Ever Getting Back Together」

Gメジャーダイアトニックコード
4-1-5-6

「Viva La Vida」Coldplay

続いては、日本でも人気バンドであるコールドプレイより「Viva La Vida」です。

こちらはいい感じにストリングスが効いた、幻想的で壮大な1曲です。
バスドラムの4つ打ちビートも、心臓の鼓動のように訴えかけてきます。

そんな壮大な世界観を持つ「Viva La Vida」ですが、ほぼ循環コードで構成されています。

|D♭   E♭|       |A♭    Fm|       |

E♭とFmは、4拍目の8分音符裏から入ります。曲のキーはA♭です。

もしギターで原曲キーを伴奏したければ、1フレットにカポタストを付ければ、演奏するキーがGキーになります。

・A♭M7 / ⅠM7 / トニック

・B♭m7 / Ⅱm7 / サブドミナントⓢ

・Cm7 / Ⅲm7 / トニックⓢ

・D♭M7 / ⅣM7 / サブドミナント

・E♭7 / Ⅴ7 / ドミナント

・Fm7 / Ⅵm7 / トニックⓢ

・Gm7♭5 / Ⅶm7♭5 / ドミナントⓢ

*ⓢ・・・代理

コード進行は
・D♭ーE♭ーA♭ーFm なので
 
・Ⅳ-Ⅴ-Ⅰ-Ⅵm
・4-5-1-6
「よん・ご・いち・ろく」というコード進行です。
コールドプレイ「Viva La Vida」

A♭ダイアトニックコード
4-5-1-6

「Get Lucky」Daft Punk

続いてはファンクな曲からも1曲ご紹介します。ダフトパンクより「ゲットラッキー」です。

ギタリストとしましては、ギターのカッティングがとても心地よく、自然と身体がノッてしまう1曲です。

コード進行はこのようになっています。

|D      |Bm7   |F#m7  |E      |
曲のキーは、F#m(A)キーになります。
ちなみにF#mとAメジャーは平行調です。中身の構成音は一緒になります。
 
F#mキーとして考えてみましょう。
・F#m7 / Ⅰm7 / トニックマイナー

・G#m7♭5 / Ⅱm7♭5 /サブドミナントマイナーⓢ

・AM7 / ♭ⅢM7 /トニックマイナーⓢ

・Bm7 / Ⅳm7 / サブドミナントマイナー

・C#m7 / Ⅴm7 / ドミナントマイナー

・DM7 / ♭ⅥM7 / サブドミナントマイナーⓢ

・E7 / ♭Ⅶ7 / サブドミナントマイナーⓢ

*ⓢ・・・代理

コード進行は
|D      |Bm7   |F#m7   |E       | なので
 
・♭Ⅵ-Ⅳm7-Ⅰm7-♭Ⅶ
・6-4-1-7
 
マイナーキーで捉えると、機能的には
・暗く少し不安定ー暗く少し不安定ー暗く安定ー暗く少し不安定
 
曲調に大きな波をつけず、たんたんと心地よいビートが刻まれる1曲です。このような曲はBGMや、挿入曲としてよく使用されます。
 
マイナーキーで解釈するのが分かりずらい方は、Aメジャーキーで解釈してみてください。Aメジャーキーで解釈するとこうなります。
・Ⅳ-Ⅱm7-Ⅵm7-Ⅴ
・4-2-6-5
ダフト・パンク「ゲット・ラッキー」

F#mキー解釈 / 6-4-1-7

Aメジャーキー解釈 / 4-2-6-5

「ゲットラッキー」を紹介するにあたって、ボーカルのファレルウィリアムスさんもとても人気なボーカリストですが、バックでギターを演奏するナイル・ロジャースさんは、ギタリスト必見のカッティングプレーヤーです。
ここで、ナイルロジャースさん代表曲でもある1曲をご紹介します。

「Le Freak(おしゃれフリーク)」Chic(シック)

こちらはナイルロジャースさん率いるファンクバンド、シックによる「おしゃれフリーク」です。

とてもファンクな、ソウルフルな1曲です。コード進行はほとんど繰り返しになります。

|Am      |D/A      |
この2つのコードです。
 
こちらの「おしゃれフリーク」も、皆さんどこかで聴いたことがあるのではないでしょうか。
世界中の様々な場所でBGM、またはテレビ番組の挿入曲として使用されています。
 
将来ギタリストを目指しているギターキッズたちはぜひ「おしゃれフリーク」のカッティングを習得してください。
ナイルロジャースさんが手がけた楽曲には、その他にも素晴らしい曲がたくさんあります。例えば、Diana Rossダイアナロス)さんの「I’m Coming Outアイムカミングアウト)」です。

ダイアナロスさんの「アイムカミングアウト」もカッティングがとてもカッコイイ曲なので、ぜひ聴いてみてください。

「Stand By Me」Ben E King(ベン・E・キング)映画スタンド・バイ・ミー主題歌

こちらは皆さんご存知の、映画スタンドバイミーの主題歌、ベンEキングさんより「スタンドバイミー」です。

映画は時代を感じるシーンももちろんありますが、世代を越えて愛される名作です。そんな素敵な映画主題歌の「スタンドバイミー」も循環コードで構成されています。ベースラインもカッコイイ1曲です。

まずはコード進行を見てみましょう。

|A      |F#m   |D      |E      |

曲のキーはAメジャーになります。
Aメジャーダイアトニックコードを見てみましょう。

・AM7 / ⅠM7 / トニック

・Bm7 / Ⅱm7 / サブドミナントⓢ

・C#m7 / Ⅲm7 / トニックⓢ

・DM7 / ⅣM7 / サブドミナント

・E7 / Ⅴ7 / ドミナント

・F#m7 / Ⅵm7 / トニックⓢ

・G#m7♭5 / Ⅶm7♭5 / ドミナントⓢ

*ⓢ・・・代理

コード進行は
|A      |F#m   |D      |E      | なので
 
・Ⅰ-Ⅵm-Ⅳ-Ⅴ
・1-6-4-5
循環コード進行は、いち、ろく、よん、ご、になります。
コードの機能面から見ても、とてもシンプルな進行。
まずは、トニックで安定のAコードから、暗く安定のF#mコードへ、そして少し不安定なサブドミナントのDコードから、不安を強めたドミナントのEコードへ進んで、また安定のAコードから始まるという繰り返しです。
 
・明るく安定ー暗く安定ー少し不安定ー不安定ー安定ー・・・・
「スタンドバイミー」もいつまでも聴いていたくなるような、素敵な曲です。
ベン・E・キング「スタンド・バイ・ミー」

Aメジャーダイアトニックコード
1-6-4-5

おわりに

循環コード進行の楽曲で、まだまだ素敵な曲が世の中にたくさんあります。皆さんがよく聴いている楽曲の中にも、実は循環コードで構成されている楽曲が1つや2つはあるかもしれません。

楽器を演奏されるミュージシャンの方で「この曲は繰り返しかな」と思ったら、楽器を使ってコード進行を探ってみてください。