今回は曲のキーがすぐわかる方法のプラスαと、コード進行の分析力を鍛えていきましょう。
曲は椎名林檎さんで「丸ノ内サディスティック」です。

コード進行から曲のキーを見つける
まずはコード進行から、曲のKeyを見つけましょう。
こちらが原曲のコード進行。
・イントロ
|A♭M7 G7 |Cm7 E♭7 |×4
・Aメロ
|A♭M7 G7 |Cm7 E♭7 |
|A♭M7 G7 |Cm7 E♭7 |
・Bメロ
|A♭M7 B♭ |E♭ E♭/G |
|A♭M7 B♭ |E♭ G7 |
・サビ
|A♭M7 G7 |Cm7 E♭7 |
|A♭M7 G7 |Cm7 E♭7 |
|A♭M7 G7 |Cm7 E♭7 |
|A♭M7 G7 |Cm7 E♭7 |
・間奏
|A♭M7 G7 |Cm7 E♭7 |×4
・Aメロ2
|A♭M7 G7 |Cm7 E♭7 |
|A♭M7 G7 |Cm7 E♭7 |
・Bメロ2
|A♭M7 B♭ |E♭ E♭/G |
|A♭M7 B♭ |E♭ G7 |
・サビ2
|A♭M7 G7 |Cm7 E♭7 |
|A♭M7 G7 |Cm7 E♭7 |
|A♭M7 G7 |Cm7 E♭7 |
|A♭M7 G7 |Cm7 E♭7 |
・間奏2
|Cm7 |Gm/B♭ |Gm |A♭M7 |
|Cm7 |Gm/B♭ |Gm |B♭m7 E♭7|
・Bメロ3
|A♭M7 B♭ |E♭ E♭/G |
|A♭M7 B♭ |E♭ G7 |G7 |
・サビ3
|A♭M7 G7 |Cm7 E♭7 |
|A♭M7 G7 |Cm7 E♭7 |
|A♭M7 G7 |Cm7 E♭7 |
|A♭M7 G7 |Cm7 E♭7 |
|A♭M7 G7 |Cm7 E♭7 |
|A♭M7 G7 |Cm7 E♭7 |
|A♭M7 G7 |Cm7 E♭7 |
|A♭M7 G7 |Cm7 E♭7 |
・エンディング
|A♭M7 G7 |Cm7 E♭7 |
|~~~||Fade out…
まずは曲のキーを判別するために、ダイアトニックコード内のメジャーコードであると思われるコードを抜き出してみましょう。
なんと7thコードが2つも出てきてしまいました。
M7コードを注目する
7thコードは一旦置いておきます。
ここで注目すべきはM7のコードです。A♭M7ですね。
M7のコードはダイアトニックコードの1番目(ⅠM7)か4番目(ⅣM7)かのどちらかです。
つまりキーを2つの絞ることができます。
キーがA♭でⅠM7の場合
ⅠM7 | A♭M7 |
Ⅱm7 | B♭m7 |
Ⅲm7 | Cm7 |
ⅣM7 | D♭M7 |
Ⅴ7 | E♭7 |
Ⅵm7 | Fm7 |
Ⅶm7♭5 | Gm7♭5 |
「丸の内サディスティック」で使われているコードの3つ当てはまりました。
キーがE♭で、A♭M7がⅣM7の場合
ⅠM7 | E♭M7 |
Ⅱm7 | Fm7 |
Ⅲm7 | Gm7 |
ⅣM7 | A♭M7 |
Ⅴ7 | B♭7(B♭) |
Ⅵm7 | Cm7 |
Ⅶm7♭5 | Dm7♭5 |
仮に曲中に出てきたB♭がⅤ7だった場合、こちらは4つ当てはまりました。
しかもキーがE♭だった場合、ⅣとⅤの1音隣の関係も当てはまります。
どうやらキーはE♭であると思われますが、もう少し考察してみましょう。
3和音でのダイアトニック・コードを見る
一度、7thとM7thを外して、3和音でのダイアトニックコードを見てみましょう。
キーがA♭でⅠの場合
Ⅰ | A♭ |
Ⅱm | B♭m |
Ⅲm | Cm |
Ⅳ | D♭ |
Ⅴ | E♭ |
Ⅵm | Fm |
Ⅶm♭5 | Gm♭5 |
こちらは変わらず3つのままです。
キーがE♭で、A♭がⅣの場合
Ⅰ | E♭ |
Ⅱm | Fm |
Ⅲm | Gm |
Ⅳ | A♭ |
Ⅴ | B♭ |
Ⅵm | Cm |
Ⅶm♭5 | Dm♭5 |
キーがE♭だった場合は、5つ当てはまりました。
曲のキーはE♭でたしかでしょうが、このままでは曲中に出てきたノンダイアトニックコードの、E♭7やG7がまだスッキリしません。
主役ぶってるA♭M7
まずはG7の解釈から進めていきましょう。
キーがE♭だった場合、平行調はCmキーです。
ライブバージョンなどのキメで終わる時もCmで終わっていますので、Cmキーと解釈しても、もちろんOKです。
まずはAメロでのこのコード進行を見てみましょう。
|A♭M7 G7 |Cm E♭7 |
このCmに行く前のG7は、本来CmキーだったらGmですが、ドミナント感を強めるために、G7となりました。
つまり同主調のCキーのⅤ7のから借りてきたG7だと解釈できます。
E♭キーで見たらG7はⅢ7、平行調のCmキーで見たらⅤ7となります。
それからサビ前のBメロのコード進行では
|A♭M7 B♭ |E♭ G7 |
という進行のあとにA♭M7からサビが始まっています。
よく見ると、A♭とGは半音違いです。
この半音違いの7thコード、ここではG7がドミナント機能を持っています。
半音違いの7thコードはドミナンントの代理機能を持つと覚えておきましょう。
仮にA♭M7がⅠM7だったら、G7は♭Ⅱ7となります。
つまりここではA♭M7が、まるで私が主役のキーよと言わんばかりにⅠM7ぶってるんです。
こういう風に一時的にドミナントから仮トニックに向かう進行を、「セカンダリー・ドミナント」といいます。
さらにサビのコード進行パターンでは
|A♭M7 G7 |Cm7 E♭7 |
この進行の中でも、A♭M7へのセカンダリードミナントがおこっています。
この進行のパターンは始まりがA♭M7で終わりがE♭7です。
ここでも本来ならⅠM7のE♭M7が、E♭7となりドミナント機能を持ってます。
仮にA♭M7がⅠM7としたら、E♭7はⅤ7です。
まとめ
|A♭M7 G7 |Cm7 E♭7 |
このコードを、E♭キーで解釈したら
|ⅣM7 Ⅲ |Ⅵm7 Ⅰ7 |
Cmキーで解釈したら
|♭ⅥM7 Ⅴ7 |Ⅰm7 ♭Ⅲ7 |となります。
曲の雰囲気としては、少し不安なA♭M7からドミナント機能を持つG7へ行き、Cmで暗く落ち着くと思いきや、E♭がE♭7となり、A♭M7へ向かわざるおえなくなりまた繰り返すという感じです。
この進行が椎名林檎さんの歌声と、ハネたリズムとマッチし、まるで聴き手までもずーっと歌っていたくなるような感覚になります。
ノンダイアトニックコードの7thコードがあれば、セカンダリードミナントの可能性を探る。