今回は「楽曲に使用されるコード進行を分析し、いかに効率よく記憶するか」について解説していきたいと思います。
きっと皆さんも、趣味の音楽活動でライブをする日、またはビジネスとしてギター(他の楽器)を演奏する日がやってくるでしょう。
そのような本番を控えており、何曲も楽曲を丸暗記しなければならないという状況において、1曲1曲何のつながりも見いだせずにコード進行を暗記することは、とても効率的とは言えません。そこで効率的な記憶術を駆使するために、頭の中に音楽ネットワークを構築しアプローチするといった手法をとります。
「木を見て森を見ず」のコード進行分析
まず悲しいことに、人は知らないことを認識できません。
どういう事かといいますと、人間は対象の新たな情報を認識しようとする時、すでに所持している情報記憶との関連づけにより認識します。よくわからなかった情報がすでに知っていることとつながり、「あぁ!これはこういうことか!」と理解した経験は多くの人が体験していることです。
つまり関連づけられる既知の情報を所持していないと、脳のネットワークがキャッチできずに情報が過ぎ去ってしまいます。
例えばこれまで音楽的教育を受けていない小学生に「米津玄師さんのLemonをメジャーキーで解釈した時、最後のコードはサブドミナントで終わっているんだよ」と言っても、何のこっちゃわかりません。
話を「曲のコード進行」に戻しましょう。
ここでいう新しい情報とは、コード進行にあたります。ギター初心者または音楽を始めたばかりの方が陥りやすい行動として、曲のコード進行を覚える時に何のつながりもなくコード進行を4小節づつ暗記していく、というような覚え方をする人が多いと思います。
これぞまさに【木を見て森を見ず】という状態です。ここで例として、1つのコード進行を見てみましょう。
初心者の方でしたら「Cコードの次はG、Gの次はAm・・・」というように、1づつ順を追ってコードをつなげていきます。ですが音楽的教養がある人であれば「このコード進行はカノンコード進行だな」と、これでお終いです。
もちろんカノンコード進行という概念を理解するためにも、音楽理論の知識は必要です。【木を見て森を見ず】という点で見ると、木がコード(進行)で、森が音楽理論です。
つまり全体像からアプローチするための音楽理論を理解していないと、楽曲を聴き聴覚的に、さらに聴覚を使い練習(演奏)し運動記憶と連動しながらコード進行を記憶していく、というステップからいつまで経っても抜け出せません。
楽曲のキーとダイアトニック・コード
ギター・マガジン 最後まで読み通せる音楽理論の本(CD付き) (Guitar Magazine)
そしてこの問題を解決するための知識が、音楽理論です。楽器初心者の方は何かと音楽理論を遠ざけがちですが、いかに早い段階で理論的な知識を理解するかしないかで、この先の技術の進歩にも雲泥の差が出ます。さらに音楽理論が大切な知識であることすら認識できません。
理論アレルギーの方もおられると思いますが、ここは騙されたと思って学習に取り組んでみましょう。音楽理論を学ぶことで、さらなる理解の習得、発見にもつながりますので、音楽Lifeも充実することは間違いありません。
まず楽曲にはキー(調)があり、ダイアトニック・コードというスケール(音階)から導き出された7つのコードがあります。楽曲に使用されるコード進行は、主にダイアトニック・コードから使用されます。また、楽曲中に使用されるコードで、ダイアトニック・コードにないコードのことをノンダイアトニック・コードと言い、ノンダイアトニック・コードは状況によって機能が変わります。
例えば最も有名なスケールで、「ドレミファソラシド」というものがあります。これをCメジャー・スケールと言い、Cメジャー・スケールから構成される7つのコードを、Cメジャー・ダイアトニック・コードと言います。
・Cメジャーダイアトニックコード
ⅠM7 | CM7 | T |
Ⅱm7 | Dm7 | SDⓢ |
Ⅲm7 | Em7 | Tⓢ |
ⅣM7 | FM7 | SD |
Ⅴ7 | G7 | D |
Ⅵm7 | Am7 | Tⓢ |
Ⅶm7♭5 | Bm7♭5 | Dⓢ |
*ⓢ・・・代理
*T・・・トニック(安定)
*SD・・・サブドミナント(少し不安定)
*D・・・ドミナント(不安定)
メジャー・キーから解釈しコード進行を分析
そしてこのダイアトニック・コードを使って、実際の楽曲を分析し記憶していきます。この作業を繰り返すことによって、楽曲を聴いただけでコード進行パターンが判断できるようになるでしょう。さらに高度な分析力が発達すれば、コード進行の中で1つだけ変化しているサブドミナントマイナーコードなどにも反応し認識するということも可能です。これは音楽教育を幼少期から行っていなくとも、訓練しだいで徐々にレベルアップしていきます。
先ほど、楽曲にはそれぞれキーがあるということを説明いたしました。皆さんご存知の通り、コードにはメジャーコードとマイナーコードという概念があります。メジャーは明るく、マイナーは暗いというイメージがあるかと思います。この明るい暗いという概念は楽曲自体のキーにもあり、基本的にはメジャーコードが主体の楽曲はメジャーキー(長調)として、マイナーコードが主体の場合はマイナーキー(短調)として捉えます。
ここでおすすめしたいのが、初心者の方は楽曲をメジャーキーとして捉え分析する、という方法です。楽曲のキーには【平行調】と呼ばれる、音楽理論が存在します。例えばCメジャーキーの平行調はAmキーです。対象のキーと平行調の関係は、構成される7つのダイアトニック・コードの順番が違うだけで同一になるのです。そこでコード進行をアナライズ(分析)する時に、まず慣れるまではメジャーキーとして解釈し行ってみましょう。
*Amダイアトニックコード
Ⅰm7 | Am7 | Tm |
Ⅱm7♭5 | Bm7♭5 | SDmⓢ |
♭ⅢM7 | CM7 | Tmⓢ |
Ⅳm7 | Dm7 | SDm |
Ⅴm7 | Em7 | Dm |
♭ⅥM7 | FM7 | SDmⓢ |
♭Ⅶ7 | G7 | SDmⓢ |
*ⓢ・・・代理
*Tm・・・トニックマイナー(暗く安定)
*SDm・・・サブドミナントマイナー(暗く少し不安定)
*Dm・・・ドミナントマイナー(暗く不安定)
ONE OK ROCK「The Beginning」のコード進行を分析
ここで実際に、Amコードが主体となっている実写版映画『るろうに剣心』主題歌でもある、ワンオクロックの大ヒット曲「The Beginning」の1番を取り上げ、コード進行を分析し暗記するコツを検証していきましょう。
「The Beginning」の1番は、このようなコード進行になります。
|Am | |F | |
|C | |G | |
|Am | |F | |
|C | |G | |
・Bメロ
|F | |G | |
|F | |E | |
・サビ
|Am | |F | |
|C | |G | |
|Am | |F | |
|C | |G |E/G#|
このようにAmコードから始まるセクションが多く、楽曲のキーはAmキーと認識できます。ですがこれを、平行調のCメジャーキーとして捉え、分析していきましょう。コード進行を分析する作業に慣れてくればマイナーキーとして捉え分析していけばいいのですが、初心者の方におすすめなのは楽曲をメジャーキーと捉え、コード進行をパッと見ただけで瞬時にメジャーキーとして分析できる、という状態にもっていくということです。
その後は個人の好みによって分析方法を判断していけば良いです。実際にプロミュージシャンでも全ての楽曲を、メジャーキーとして捉え解釈するという方は多くいます。
それではまずAメロです。コード進行は、Am→F→C→Gというコード進行パターン。サビでもこの進行が使われております。Cメジャーダイアトニック・コードから考えると、Ⅵm→Ⅳ→Ⅰ→Ⅴというように解釈できます。このⅥm→Ⅳ→Ⅰ→Ⅴというコード進行は、実は多くのヒット曲に使用される【感動コード】と呼ばれるコード進行の3番目のコード(Ⅵm)から始まめたパターンです。
・感動コード進行
C→G→Am→F
・感動コード進行をⅥmコードから始めたパターン
Am→F→C→G
このような感動コード進行を、平行調のⅥm(6度マイナー)コードから始めたコード進行パターンも多くのヒット曲で使用されます。このように分析し、このコード進行パターンをメインパターンと記憶します。
サビでも同じ進行が使用されていますが、サビでは2回目の繰り返しで、最後の小節がE/G#コードになっています。このE/G#は、ダイアトニック・コードには出てこないノンダイアトニック・コードです。これはマイナーキーで解釈した時に、トニック・マイナー(主音)のAmコードへ行くためのドミナント・コードになります。トニック・マイナーへ劇的に進行するために生まれた、ハーモニック・マイナー・スケールから登場したⅤ7です。これをメジャーキーで解釈すると、Ⅲ7になります。なのでサビでの進行は、「2回目で最後の小節はドミナント・コード(Ⅲ7)」と認識して記憶します。
次は進行パターンが違う、Bメロです。Bメロでは、F→G→F→Eという進行になります。メジャー・キーで解釈した時、FコードはⅣで、GコードはⅤになります。このⅣ→Ⅴという進行は、勢いを感じさせたいポイントではよく使用されます。まさにユーロビート進行のような、勢いのある進行パターンです。次に登場するEコードは、メインパターンで登場するドミナント・コード(Ⅲ7)にあたります。なのでBメロは、Ⅳ→Ⅴ→Ⅳ→Ⅲ(4-5-4-3)と認識し記憶します。
まとめますと、1番のコード進行はこのように分析できます。
メインパターン(感動コードの6度マイナーコード始まり)×2
・Bメロ
4→5→4→3(3はドミナント・コード)
・サビ
メインパターン×2(2回目では最後の小節がドミナント・コード)
このように分析することで、圧倒的に覚えやすく記憶しやすくなるでしょう。
おわりに
今回は曲のコード進行を分析し、記憶しやすくする方法を解説しました。初めはコード進行を分析するのに時間がかかるかもしれません。ですがこの作業を繰り返すことによって、ポピュラーミュージックに使用されるコード進行が蓄積され、見ただけで瞬時に判断できるようになるはずです。
目標は楽曲を聴いただけで、「この楽曲はあのコード進行パターンだな」と認識できるようなるこです。これは幼少期から音楽教育を受けていなくても、徐々にステップアップすることで習得することは可能な能力です。ぜひ様々な楽曲を分析し、コード進行パターンを脳内に蓄積させていきましょう。