ギター1本で伴奏からメロディまで奏でるソロギター。「お気に入りの曲をソロギターアレンジしたい!」と、ギターをはじめた方なら1度は思ったことがあるかと思います。または、好きなアーティストの「ソロギターの譜面が見つからない」という場合もあるでしょう。
今回は【ソロギターアレンジ入門】というテーマで、お気に入りの曲をソロギターにアレンジする方法を解説します。アレンジと聞くと、難易度は高く感じるかもしれません。ですがポイントさえ押さえてしまえば、誰にでも簡単にソロギターアレンジができます。ソロギターアレンジ、フィンガーピッキング(指弾き)を身に着けたい方は、ぜひご覧ください。

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ソロギターアレンジのポイント
それでは早速、ソロギターアレンジのポイントを見ていきましょう。
まず前提としまして、ソロギターアレンジをしたい楽曲の”コード進行”や”メロディ”などの情報が必要です。
耳コピが難なくこなせる方は問題ありません。耳コピができないという方も問題ありません。市販のスコアや、コード譜掲載サイトを併用しながら進めていきましょう。
はじめはミドルテンポのポップス、またはゆっくりとしたバラードなどから楽曲を選ぶのも得策です。アレンジの練習としまして、民謡・童謡などからはじめてみるのもよいかと思います。ソロギターの演奏自体に慣れてきましたら、シャッフル(メロディがハネている楽曲)の楽曲アレンジにも挑戦してみてください。
tab譜や楽譜に記録しながら進める
まずソロギターアレンジをする上で、進行状況を記録できるようにtab譜または楽譜を用意してください。もちろん楽譜制作スコアなどのソフトを使ってもかまいません。
最終的にはアレンジの追加や修正が出てくるかもしれないので、あらかじめ記録しながら進めていきましょう。

音域と楽曲キー
ソロギターアレンジをする上で重要なのが、編曲後のキーを決めることです。例えば、原曲はEメジャーで発表されていても、ボーカリストが歌うわけではないので自分が演奏しやすいキーに移調してOK。
しかし、あらかじめ楽曲の音域を調べておくことはとても重要です。まずは歌メロで最も高い音と、最も低い音を把握しましょう。そうすることで、ルートとして押さえるベース音との兼ね合いを予測することができます。その上で、移調した時にプレイしやすいキーへ合わせると効率的です。
原曲と同じキーでプレイしたい方は、カポタストを使用してください。キーがEメジャーの曲をCメジャーキーに移調してアレンジした場合は、4フレットにカポタストを付ければ原曲キー。またはF#メジャーキーの曲を、Gメジャーキーに移調してプレイした場合は半音下げチューニングで原曲キーとなります。
ソロギターでは複雑な運指を必要とする場合があるので、ギターで開放弦を多用できるキーであれば圧倒的に演奏しやすいです。とくにベース音を開放弦で補える箇所では、左手の自由度がかなり上がります。
編曲後に移調されるキーでは、Cメジャー(Am)やGメジャー(Em)、Dメジャー(Bm)、またはAメジャーやEメジャーキーも多用されるキーです。

コード進行のアレンジ
続いては、コード進行のアレンジについてです。当サイト【ギタリストマッスル】でも何度も取り上げているテーマですが、コードには代わりになる代用コードというものがあります。
|F C |D#dim E |Am ||
例えばAmキーで、このようなコード進行があったとしましょう。ここで注目するコードは、D#dim。こちらはそのまま演奏しても、もちろんOKです。ですがプレイヤーによっては、ベース音の音域をもう少し下げたいと思う方もおられるかもしれません。
こちらのD#dimコードは、次のEメジャーコードへ進行するためのドミナントコード、またはパッシングdimコードです(経過的に挿入されたdimコード)。一方でEコードを仮トニックとして解釈した場合、ドミナントコードはB7となります。
ここでD#dimとB7の、コードトーン(構成音)を比較してみましょう。
D#dim | レ#、ファ#、ラ、ド |
B7 | シ、レ#、ファ#、ラ |
コードトーンの構成音はとてもよく似ています。一時的にEコードを仮トニックとして見立てて、ドミナントモーションをした進行とも解釈可能です。つまりここではD#dimコードを、B7に置き換えることができます。
|F C |B7 E |Am ||
このようにコードの代用を効かせながらアレンジをしていくと、押さえにくい箇所もスムーズな運指でプレイできるはずです。
ルート音を押さえる指の選択
続いてはコードのルート音、つまりベース音を押さえる左指の選択です。
セーハフォームのように、左手の自由度が制限されやすいフォームであれば、コードフォームの見直しをしてもよいでしょう。
例えば6弦1フレットからセーハフォームで押さえるFコードでは、6弦1フレットのルート音を左手親指で握り込むように押さえると、親指以外の自由度がかなり広がります。
またGM7コードを押さえようとする時、6弦3フレットのルート音を左手中指で押さえれば、GM7にadd9音のメロディやコードトーンの付け足しも可能です。
このような普段あまり押さえないコードフォームを発展させることで、伴奏とメロディを奏でる弾きやすさが向上します。
反対に、コードに対して省略してもよいと判断したテンションは省略してもOKです。原曲の雰囲気からは遠ざかりますが、ソロギター初心者の方からすれば難易度が下がり、1曲マスターすることのほうが大切でしょう。
変則チューニング”ドロップD”の使用選択
続いては、変則チューニングです。ソロギター界のスペシャリストである押尾コータローさんをはじめ、様々な名プレイヤーが変則チューニングを使用しています。ですが決して変則チューニングをするから完成度が上がる、というわけではありません。あくまでプレーするギタリストのイメージを再現する過程で、変則チューニングが使用されているのです。

変則チューニングの中でも、ドロップD(Drop D tuning)という代表的なチューニング法があります。ドロップDチューニングとは、レギュラーチューニングから6弦の音を1音下げたDに合わせることから名付けられたチューニング方法です。
変則チューニングに慣れない方では、ドロップDチューニングだけでも抵抗感があるかもしれません。ですがドロップDチューニングには、それぞれメリットがあります。
まずDメジャーキーの演奏においては、最も低い音がD音になること、また4弦だけではなく6弦開放もトニックコードの箇所で使用できるのでプレイアビリティの向上。
Gメジャーキーでは、サビ前などで使用されるドミナントコードのルート音を、6弦開放を使用できるのでダイナミクスを上げることができる。
その他にも、セーハフォームを避けれるという点もあり、6弦1フレットをセーハフォームで押さえるFコードも、ドロップDでは6弦3フレットにルート音がくるので左手の自由度が広がります。
転調する楽曲のアレンジ法
「ソロギターアレンジをしたい楽曲のコード進行を調べたら、サビで転調していた!」というようなこともあるかと思います。
楽曲により転調の仕方は様々ですが、LASTサビだけ転調しているというようなケースでは転調部分を省略して簡易バージョンにすることもできるでしょう。
対処法としましては、1音転調の場合はCメジャーキーからDメジャー、またはGメジャーからAメジャーキーへの転調。半音転調の場合では、EメジャーからFメジャーキーへの転調に合わせて移調するのも有効です。
左手の運指を変化させたくないという方は、転調の直前にカポタストを付けるという高度な技も使えます。また、簡単に移調しやすいカポタストも販売されていますので、ご自身のアレンジ法に合わせて検討してみてください。
ソロギターアレンジの順番
ソロギターアレンジの正式な方法というものはなく、プレイヤーによってアレンジの方法は様々です。ここではソロギターアレンジをはじめて行う方に向けて、アレンジ過程をご紹介します。
まずは楽譜やギターtab譜に、楽曲の構成をイメージしながら小節線を引きましょう。おすすめは見やすいように4小節区切りで段落を変えていくのがよいと思います。
そしてギターで楽曲のメロディを弾きながら、自分の弾きやすそうなキーを探してください。この時、市販のスコアを見ながらでもOKです。
アレンジ後のキーが想定でき移調を行いましたら、イントロでのメインメロディ、そして歌パートのメロディを移調し楽譜やtab譜に記入してください。なるべく1f~3fあたりでまとめると演奏しやすいです。逆に歌の音域がとても広い楽曲だと、運指の難易度も上がります。
その後、移調されたコードを元に、伴奏ベース音としてルート音を付け加えていきしょう。難易度を下げるためには、開放弦、そして1f~3fあたりで押さえるルート音を決めるとよいです。
そしてご自身のアレンジイメージを参考にしながら、コードトーンを付け加えていけばOK。
ソロギターの演奏ポイント
アレンジ方法が見えてきたところで、続いてはソロギターの演奏ポイントを解説していきます。
簡単なアレンジでも少し気をつけるだけで、演奏のクオリティがグッと上がるでしょう。
伴奏とメロディを頭の中で分別
続いてのポイントは、右手で弾く弦をメロディなのか伴奏なのか、頭の中で認識しながら弾くことです。
ソロギターアレンジが終わり左手の運指も決まったら、何度も繰り返し弾き込むことで、演奏で使われる筋肉と楽曲メロディが身体に染み込んでいくでしょう。
メロディラインがぼやけてしまわないように、伴奏パートと分別して演奏してください。
演奏ボリュームをコントロール
続いてのポイントは、演奏ボリュームを自分自身でコントロールすることです。
一定のボリュームをキープして演奏してもよいのですが、「Aメロ部分では優しく弾く」「最後の大サビにボリュームのMAXをもってくる」など、右手でボリュームを少しコントロールすることで演奏に一味加えることができます。
また演奏ボリュームだけではなく、セクションごとに伴奏パートの音数を増やし、ダイナミクスを上げるという方法も有効です。
おわりに
今回はソロギターアレンジについて解説しました。覚えておいてほしいことですが、アレンジに正解はありません。原曲に忠実にアレンジをするのか、それとも雰囲気を大きく変えてアレンジするかは演奏するプレイヤーしだいです。
何曲かソロギターアレンジを完成させてみたら、ソロギターを本職とする演奏者のアレンジと見比べてみてください。
そうすることによって、また新たな発見や修正点も見つかると思います。この繰り返しによって音楽理論の習得、技術のレベルアップも向上していくでしょう。
さらにソロギターは、アコーステックライブなどの歌モノでも活躍してくれます。ギター1本で様々な表現ができれば、間奏やエンディングでも観客を引き付ける演奏ができます。そういう時のためにも、普段からアレンジ慣れしておくことも大切です、
ぜひ好きな楽曲のソロギターアレンジに挑戦してみてください。