【サブドミナントマイナー】名曲コード進行9選

サブドミナントマイナーの切ない歌を聴く女性

今回はサブドミナントマイナーコード(暗く少し不安定な響き)について解説と、ヒットソングを取り上げ、実用例と共にご紹介したいと思います。
「サブドミナントマイナーって何?」という方でも、わかりやすく解説しますのでご安心ください。

ここでは皆さんがきっと知っているであろうJ-POPヒットソングを使いながらご紹介します。

皆さんも「その日」「その時」の瞬間によって、聴く音楽は違うと思います。
ハッピーな時、試合前の興奮している時、本番前で緊張を解きたい時、失恋して落ち込んでいる時、きっと皆さんのテーマソングの中にもサブドミナントマイナーコードが輝く1曲があると思います。

サブドミナントマイナーとは

まずサブドミナントマイナーとは、同主調のマイナーキーコードの、機能がSDm(サブドミナントマイナー)のコードを、曲中に借用したコードを指します。
例として、対象の曲のキーがCメジャーキーだった場合のSDmコードをチェックしてみましょう。

■Cメジャーダイアトニックコード

ⅠM7 CM7 T
Ⅱm7 Dm7 SDⓢ
Ⅲm7 Em7 Tⓢ
ⅣM7 FM7 SD
Ⅴ7 G7 D
Ⅵm7 Am7 Tⓢ
Ⅶm7♭5 Bm7♭5 Dⓢ

*ⓢ・・・代理
*T・・・トニック(安定)
*SD・・・サブドミナント(少し不安定)
*D・・・ドミナント(不安定)

Cメジャーダイアトニックコードの中には、SDm(サブドミナントマイナー)はありません。
ではどこからサブドミナントマイナーコードが登場するかと言いますと、同主調が同じのCmダイアトニックコードから登場します。

■Cmダイアトニックコード

Ⅰm7 Cm7 Tm
Ⅱm7♭5 Dm7♭5 SDmⓢ
♭ⅢM7 E♭M7 Tmⓢ
Ⅳm7 Fm7 SDm
Ⅴm7 Gm7 Dm
♭ⅥM7 A♭M7 SDmⓢ
♭Ⅶ7 B♭7 SDmⓢ

*ⓢ・・・代理
*Tm・・・トニックマイナー(暗く安定)
*SDm・・・サブドミナントマイナー(暗く少し不安定)
*Dm・・・ドミナントマイナー(暗く不安定)

Ⅳmをはじめ、Ⅱm♭5、♭Ⅵ、♭Ⅶ、の4つのサブドミナントマイナーが同主調のダイアトニックコードにはあります。

例えばCメジャーキーのコード進行上で、Fmが出てきたり、A♭が出てくるというのが、サブドミナントマイナーが借用されているということです。

サブドミナントマイナーが登場するパターンというのは一概に決まっておらず、様々な場面で使用され、メジャーキーでのⅢ7とともに、多数使用されるノンダイアトニックコード(ダイアトニックコードには無いコード)です。

サブドミナントマイナー使用例
*キーCメジャー

・|Fm(A♭)  G  |C      |

・|F  Fm |C      |

・|A♭    |B♭    |C     |

・|Dm7♭5  G |C      |

*Fm6とDm7♭5の構成音(コードトーン)は同じ

Fm6 ファ ラ♭ ド レ
Dm7♭5 レ ファ ラ♭ ド

他にも展開系(ルートが変わりコードネームが変わる)のサブドミナントマイナーコードもありますが、ここでは主に同主調の借用コードを元に、ヒットソングの実用例と共にご紹介したいと思います。

「手紙~拝啓十五の君へ~」アンジェラ・アキ


まずご紹介するのはアンジェラ・アキさんによる「手紙~拝啓十五の君へ~」です。
NHKみんなのうた、全国合唱コンクール中学の部課題曲など大ヒット曲としてどの世代からも愛される1曲です。

僕も18歳の頃にとある場所でラジオから「手紙~拝啓十五の君へ~」がかかった時は、胸がジーンとしたのを昨日のことのように覚えています。

「手紙~拝啓十五の君へ~」で注目してもらいたいのが、「誰の言葉を信じ歩けばいいの」のサビの部分です。
サビの前半部分でのコード進行をチェックしてみましょう。

|A♭   |E♭   |Fm   |Cm  |

|D♭  |A♭   |G♭  |E♭ |

曲のキーはA♭メジャーキーになります。
■A♭メジャーダイアトニックコード
ⅠM7 A♭M7 T
Ⅱm7 B♭m7 SDⓢ
Ⅲm7 Cm7 Tⓢ
ⅣM7 D♭M7 SD
Ⅴ7 E♭7 D
Ⅵm7 Fm7 Tⓢ
Ⅶm7♭5 Gm7♭5 Dⓢ

*ⓢ・・・代理
*T・・・トニック(安定)
*SD・・・サブドミナント(少し不安定)
*D・・・ドミナント(不安定)

注目のサブドミナントマイナーコードは「G♭」です。
つまり「♭Ⅶ」になります。
ちなみに「あるけば いい の~」のメロディラインは『ソ♭ ファ ソ♭ ファ ソ♭ソ♭ ソ~』となっています。
初めはわかりやすいように、キーをCメジャーキーに移調して見てみましょう。
*Cメジャーキーに移調したコード進行
|C     |G     |Am   |Em  |

|F    |C    |B♭   |G    |

このB♭が、同主調のCmキーから登場した♭Ⅶです。
曲を聴いてもらうとわかる通り、♭Ⅶの小節では、サブドミナントマイナー独特の響きを感じられると思います。
人によっては、外れてると感じる方もいるかもしれません。
ですがそのズレている響きも、歌詞の「信じ歩けばいいの」という部分で、迷いや悩みと葛藤している様を感じさせられるのは僕だけではないでしょう。
サブドミナントマイナーの持つ響きが、歌詞とベストマッチした素晴らしいコード進行です。

「ギブス」椎名林檎


続いては椎名林檎さんで「ギブス」です。林檎ファンからすれば初期の代表曲の1曲ではないでしょうか。
特に注目してもらいたいのが、サビの終わりです。

「ギブス」もとても切ないイメージを印象付ける曲なので、サブドミナントマイナーが随所登場します。
サビのコード進行をチェックしてみましょう。

*サビ
|CM7  G  |D   Em7 |
|D   CM7 |D   Em7-D|

|CM7  G  |D   Em7-D|
|CM7  G/B |D  Em7-D|

|Cm      |C/D      |

曲のキーはGメジャーになります。
■Gメジャーダイアトニックコード

ⅠM7 GM7 T
Ⅱm7 Am7 SDⓢ
Ⅲm7 Bm7 Tⓢ
ⅣM7 CM7 SD
Ⅴ7 D7 D
Ⅵm7 Em7 Tⓢ
Ⅶm7♭5 F#m7♭5 Dⓢ

*ⓢ・・・代理
*T・・・トニック(安定)
*SD・・・サブドミナント(少し不安定)
*D・・・ドミナント(不安定)

サブドミナントマイナーはサビの終わりで出てくるCmです。
このⅣmであるCmの切なさがとても曲調を作り上げています。

「最後の雨」中西保志

続いては中西保志さんによる名曲「最後の雨」です。カラオケランキングでも不動の人気ナンバーの1曲です。

こちら「最後の雨」で注目してもらいたいのが「僕の傘 残して 駆け出してゆく」のAメロ部分です。Aメロ前半部分のコード進行をチェックしてみましょう。

|E    |B/D# |A/C# |Am/C  |
曲のキーはEメジャーキーになります。
■Eメジャーダイアトニックコード
ⅠM7 EM7 T
Ⅱm7 F#m7 SDⓢ
Ⅲm7 G#m7 Tⓢ
ⅣM7 AM7 SD
Ⅴ7 B7 D
Ⅵm7 C#m7 Tⓢ
Ⅶm7♭5 D#m7♭5 Dⓢ

*ⓢ・・・代理
*T・・・トニック(安定)
*SD・・・サブドミナント(少し不安定)
*D・・・ドミナント(不安定)

注目のサブドミナントマイナーは「Am」、つまり「Ⅳm」です。
このⅣmがとても悲し気な雰囲気を醸し出しています。

ちなみにこのAmに進行するまでの、onコード(分数コード)が、クリシェになっています。
Eコードのルート音のミから始まり、ミ→レ#→ド#→ド、という動きです。

滑らかに下がって行き、さらにサブドミナントマイナーで悲し気に聴こえます。

「愛を込めて花束を」Superfly


続いては結婚式のテーマソングスーパーフライさんより「愛を込めて花束を」です。
「愛を込めて花束を」では巧みにサブドミナントマイナーが活用されています。

特に注目してもらいたいのが、イントロとサビ部分です。
コード進行をチェックしてみましょう。

*イントロ
|G  Dm7  |C  Cm Am7/D|
|G  Dm7  |C  Cm  |(2/4)Am7/D|

*サビ
|G  D/F#|Em7  Bm7|C  G/B|Am7  D |
|G  D/F#|Em7  Dm7 G7|C Cm|

曲のキーはGメジャーキーになります。
■Gメジャーダイアトニックコード
ⅠM7 GM7 T
Ⅱm7 Am7 SDⓢ
Ⅲm7 Bm7 Tⓢ
ⅣM7 CM7 SD
Ⅴ7 D7 D
Ⅵm7 Em7 Tⓢ
Ⅶm7♭5 F#m7♭5 Dⓢ

*ⓢ・・・代理
*T・・・トニック(安定)
*SD・・・サブドミナント(少し不安定)
*D・・・ドミナント(不安定)

まずイントロの、G→Dm7→C→Cm、の部分です。
CmはⅣmとなり、サブドミナントマイナーコードです。

初めに出てくるDm7のコードは、こうとも解釈できます。
Dm7=F/D

ここで2つのコードトーン(構成音)をチェックしてみましょう。

Dm7 レ ファ ラ ド
F/D ファ ラ ド / レ
どちらもベース音(一番低い音)がレなので、響きは同じです。
つまりこちらも実は、Fコード(Ⅶ♭)でサブドミナントマイナーだったのです。
イントロとサビでは、サブドミナントマイナーコードが間おきに登場しています。
サビの終わりではこんな進行です。
|G  D/F#|Em7  Dm7 G7|C  Cm |
Dm7→G7→C、となっており、一時的にCメジャーキーのⅡ-Ⅴ進行(ツーファイブ)をしています。
サビの終わりはCからCmで終わっています。歌詞の「照れていないで」とのマッチも良いですね。

「Wherever you are」ONE OK ROCK

続いては、ワンオクロックより「Wherever you are」です。
ワンオクロックの「Whrever you are」では、注目してもらいたいのがイントロとサビ部分です。

それではコード進行を見てみましょう。

*イントロ
|E    |Am   |E     |Am   |

*サビ
|E     |B/D# |C#m  |G#m  |

|A     |E    |Am   |B    |

こちらは曲のキーがEメジャーキーになります。

■Eメジャーダイアトニックコード

ⅠM7 EM7 T
Ⅱm7 F#m7 SDⓢ
Ⅲm7 G#m7 Tⓢ
ⅣM7 AM7 SD
Ⅴ7 B7 D
Ⅵm7 C#m7 Tⓢ
Ⅶm7♭5 D#m7♭5 Dⓢ

*ⓢ・・・代理
*T・・・トニック(安定)
*SD・・・サブドミナント(少し不安定)
*D・・・ドミナント(不安定)

イントロ部分で早速登場するのが、Amコードです。
こちらのAmが、Ⅳmのサブドミナントコードです。

イントロではトニックのEコードと、サブドミナントマイナーのAmの交互で進行していきます。

サビ部分では、最も緊張感が高まるドミナントのBコードの前に設置され、ドミナントコードを上手く引き立たせています。

「ピースサイン」米津玄師


こちらはアニメ『僕のヒーローアカデミー』主題歌、米津玄師さんで「ピースサイン」です。
勢いのあるスピーディーな1曲です。

注目してもらいたいのが、サビ終わりの「さらば掲げろピースサイン 転がっていくストーリーを」の部分です。

|A♭ B♭|Bdim Cm|B D♭|E♭ |
こちらは曲のキーがE♭メジャーキーになります。
■E♭メジャーダイアトニックコード
ⅠM7 E♭M7 T
Ⅱm7 Fm7 SDⓢ
Ⅲm7 Gm7 Tⓢ
ⅣM7 A♭M7 SD
Ⅴ7 B♭7 D
Ⅵm7 Cm7 Tⓢ
Ⅶm7♭5 Dm7♭5 Dⓢ

*ⓢ・・・代理
*T・・・トニック(安定)
*SD・・・サブドミナント(少し不安定)
*D・・・ドミナント(不安定)

注目してもらいたいのが、BとD♭コードの小節です。B(C♭)が♭Ⅵ、D♭が♭Ⅶで、サブドミナントマイナーになります。
サブドミナントマイナーが2つ続いて上昇という進行ですね。

ちなみにBdimコードは、Cハーモニックマイナーから登場した、Ⅶdimです。

「シーソーゲーム~勇敢な恋の歌~」Mr.Children


続いてはミスターチルドレンより、「シーソーゲーム」です。

注目してもらいたいのが、Aメロとサビ部分です。
それではコード進行をチェックしてみましょう。

・Aメロ
|E B |A Bsus4 B|E B|A  C D|
|E    |B    | C  D  |E    |

*サビ(前半部分)
|E     |     |A    |Am    |
|G#m  |C#m  |A    |B    |

こちらは曲のキーがEメジャーキーになります。
■Eメジャーダイアトニックコード
ⅠM7 EM7 T
Ⅱm7 F#m7 SDⓢ
Ⅲm7 G#m7 Tⓢ
ⅣM7 AM7 SD
Ⅴ7 B7 D
Ⅵm7 C#m7 Tⓢ
Ⅶm7♭5 D#m7♭5 Dⓢ

*ⓢ・・・代理
*T・・・トニック(安定)
*SD・・・サブドミナント(少し不安定)
*D・・・ドミナント(不安定)

Aメロでは、C→D、という進行が登場していますね。
こちらはCが♭Ⅵ、Dが♭Ⅶの、サブドミナントマイナーの上昇の進行です。

次にサビ部分ではⅣのAから、ⅣmのAmへと進行しています。
ⅣmのAmがサブドミナントマイナーです。

「シーソーゲーム」も随所にサブドミナントマイナーが使われております。
とくに大サビ前のベースソロでは、Emスケール音で組み立てられています。
(ベースソロメロディライン:レードーシラーシーミ)

「レイニーブルー」徳永英明

続いては徳永英明さんで「レイニーブルー」です。徳永英明さんの代表曲の1つでもありますね。

注目してもらいたいのがサビ後半の部分です。
それではコード進行を見てみましょう。

*サビ(後半部分)
|AM7 B/A|G#7-G#7/C-C#m-C#m/B|
|AM7  AmM7|E      |
こちらは曲のキーがEメジャーキーになります。
■Eメジャーダイアトニックコード
ⅠM7 EM7 T
Ⅱm7 F#m7 SDⓢ
Ⅲm7 G#m7 Tⓢ
ⅣM7 AM7 SD
Ⅴ7 B7 D
Ⅵm7 C#m7 Tⓢ
Ⅶm7♭5 D#m7♭5 Dⓢ

*ⓢ・・・代理
*T・・・トニック(安定)
*SD・・・サブドミナント(少し不安定)
*D・・・ドミナント(不安定)

「そっと 雨」の部分でAmが登場しています。
こちらはⅣmのサブドミナントマイナーです。

ⅣのAコードから、ⅣmのAmへと進行して、悲し気に終わっています。
とても曲の雰囲気を作っている瞬間でもありますね。

「さよならの向こう側」山口百恵

続いては山口百恵さんより「さよならの向こう側」です。
「プレイバックPart2」とともに、山口百恵さんの代表曲の1つです。

注目してもらいたいのはエンディングの部分です。
それではコード進行をチェックしてみましょう。

・Ending
|F    B♭m |F    B♭m |
|F    B♭m |F    D♭E♭|
|F      ||
曲のキーはFメジャーとなっております。
■Fメジャーダイアトニックコード

ⅠM7 FM7 T
Ⅱm7 Gm7 SDⓢ
Ⅲm7 Am7 Tⓢ
ⅣM7 B♭M7 SD
Ⅴ7 C7 D
Ⅵm7 Dm7 Tⓢ
Ⅶm7♭5 Em7♭5 Dⓢ

*ⓢ・・・代理
*T・・・トニック(安定)
*SD・・・サブドミナント(少し不安定)
*D・・・ドミナント(不安定)

コード進行と、Fメジャーダイアトニックコードを見比べるとわかる通りに、Fコード以外が全てノンダイアトニックコードで、サブドミナントマイナーコードです。

トニックコードのFの次に、B♭mが登場しています。
こちらはⅣmのサブドミナントマイナーです。
続いてFとB♭mのコードを繰り返した後に、D♭→E♭→F、という終わり方です。
D♭は♭Ⅵ、E♭は♭Ⅶのサブドミナントマイナーです。

おわりに

サブドミナントマイナーを、名曲・ヒットソングとともに解説しました。どの曲も素敵な曲ばかりだと思います。他にもまだまだサブドミナントマイナーが生きた曲がたくさんあります。

きっと皆さんのお気に入り曲にも、サブドミナントマイナーが使用されている曲があると思いますのでぜひ見つけてみてください。

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